サステナビリティ関連情報の開示を促進、「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」を公表 金融庁
掲載:2024年11月22日
リスクマネジメント速報
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金融庁は11月8日、「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」(以下、好事例集)を公表しました。好事例集は金融庁が2018年から毎年、公表しているもので、企業や投資家・アナリスト、有識者などが参加する「記述情報の開示の好事例に関する勉強会」での議論を踏まえて内容が更新されています。
今般公開された好事例集では、有価証券報告書のサステナビリティに関する考え方および取り組みの全般的な開示ポイントのほか、2023年12月期や2024年3月期などの有価証券報告書を実際に取り上げ、好事例だとする箇所を示しています。サステナビリティ情報は2023年1月に改正された「企業内容等の開示に関する内閣府令」で有価証券報告書に記載する欄が新設されました(2023年3月期以降が対象)。
好事例集に取り上げられたのは、「全般的要求事項」の開示例として8社、「個別テーマ」の開示例として6社でした。前者では例えば、グループERMのマネジメント体制やリスクアペタイト・フレームワークを用いたリスクコントロールの枠組み、リスクの優先順位付けの方針および即時対応が必要なリスクへの対応体制について、端的に記載があることを評価したとする好事例が掲載されています。後者では、「レジリエンスに関する指標を設定し、指標の定義を具体的に記載するとともに、目標と実績を定量的に記載」したことを評価したとするものなどがありました。具体的には、「重大事故発生件数」と「外部からのサイバー攻撃に伴う電気通信サービス停止件数」を指標とし、年度ごとの実績値と目標値を有価証券報告書に記していました。
サステナビリティ関連の用語(単語)に注目してその開示状況を調べた結果も掲載されています。単語ごとに開示を行っている企業数を調査・集計したもので、単語は金融庁が公表している文書「記述情報の開示に関する原則(別添)―サステナビリティ情報の開示について―」で例示されている単語5つ(人権▽腐敗防止▽贈収賄防止▽サイバーセキュリティ▽データセキュリティ)に気候変動▽TCFD▽生物多様性▽情報セキュリティ▽知的財産▽DXの6つを加えた11個です。
それによると、2023年3月期から2024年3月期にかけてすべての単語において開示を行っている企業数と開示率が増加しました。開示率が最も高い単語は「気候変動」で74.6%、次いで「DX」が54.3%、「知的財産」が51.3%、「情報セキュリティ」が51.2%でした。「人権」と「TCFD」は4割台でした。他方、11の単語のうちもっとも開示率が低かったのは「データセキュリティ」で1.4%、次いで「贈収賄防止」が1.7%、「腐敗防止」が4.5%でした。なお、「サイバーセキュリティ」は13.5%でした。
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