サステナビリティ基準委員会(SSBJ)事務局は8月末、新たに「SSBJハンドブック」として12点の文書を公表しました。SSBJハンドブックは、SSBJ基準を適用する際の参考となる資料で、SSBJに寄せられた質問のうち、関係者のニーズが高いものから優先して取りまとめられています。
新たに公開された12点の文書タイトルは次の通りです。
①実務上不可能である場合②識別したリスク及び機会に関する情報の重要性の判断③サステナビリティ(気候)関連のリスク及び機会が戦略及び意思決定に与える影響に関する開示④気候関連の移行計画の作成に用いた主要な仮定⑤一般基準におけるレジリエンスの開示⑥一般基準におけるレジリエンスと気候レジリエンスの定めの違い⑦気候レジリエンス(1)気候レジリエンスの開示⑧気候レジリエンス(2)気候関連のシナリオ分析⑨気候レジリエンス(3)気候関連のシナリオ分析に対して用いるアプローチ⑩気候レジリエンス(4)気候レジリエンスの評価⑪自社の温室効果ガス排出源をどのように特定すればよいか⑫役員報酬について気候関連の評価項目と他の評価項目に係る部分を区分して識別できない場合。
例えば、「実務上不可能である場合」と題されたSSBJハンドブックは、「修正再表示」が「実務上不可能」である場合について解説しています。
SSBJ基準では、過去の報告期間において重要な誤謬が認められる場、当該する報告期間の数値を再修正表示することによって訂正することを求めています(適用基準第86項)。一方で、表示されている過去のすべての報告期間について、当該誤謬の影響を判断することが「実務上不可能」である場合、一定の免除規定が設けられています。
ここで「実務上不可能」である場合に該当するケースとはどういった場合なのか。次に「実務上不可能」である場合に該当したとき、どのような開示が必要となるのか。このような疑問が解消されるよう、「実務上不可能」である場合を具体的に例示するとともに、開示要求を記しています。
基本的には、過去に情報が収集されておらず、合理的な努力を行っても算定できない場合は「実務上不可能」とされます。一方、過大なコストや労力のみを理由として「実務上不可能」と結論付けることは「経営者の評価に基づいた主観的な判断」となり、適切ではないとされています。そのため「実務上不可能と位置付けることの閾値は高い」とし、「あらゆる合理的な努力を払った後にも適用することが出来ない場合」が「実務上不可能である場合」になるとされています。
「SSBJハンドブック」は今年3月末以降、毎月末に数点ずつ新規文書が追加・公表されています。これまでに公表された文書はすべて、SSBJの公式サイトに一覧で掲載されています。