サステナビリティ基準委員会(SSBJ)事務局は7月31日、「SSBJハンドブック」として新たな文書を公表しました。
今年3月にSSBJがSSBJ基準を発表して以来、SSBJ事務局は毎月月末に、SSBJ基準の適用に関する参考情報を「SSBJハンドブック」として公開しています。なお、SSBJハンドブックはSSBJの審議を経ずに公表される文書です。SSBJに寄せられた質問のうち、関係者のニーズが高いものを優先的に作成しています。
7月末に新たに公開された文書は、合計6点です(①参照する「SASBスタンダード」のバージョン②産業横断的指標等(気候関連の移行リスク、気候関連の物理的リスク及び気候関連の機会)に関する開示③資本投下に関する開示④内部炭素価格⑤複数の内部炭素価格を用いている場合の開示⑥カーボン・クレジット)。
①のテーマである「SASBスタンダード」とは、産業別基準のことです。SSBJ基準では、サステナビリティ関連のリスク及び機会の識別や、識別したリスク及び機会に関する重要性がある情報の識別を行う際に「SASBスタンダード」を参照し、その適用可能性を考慮しなければならないとしています。本ハンドブックによると、SSBJ基準では、「SASBスタンダード」は2023年12月に改訂されたバージョンを指すと解説しています。なお、ISSB基準ではバージョンを明示していないため、IFRS財団が改訂した場合、自動的に改訂後の「SASBスタンダード」を参照することになると考えられています。
②では気候関連の移行リスク、気候関連の物理的リスク、気候関連の機会の開示を作成するにあたって、具体的にどのような開示が求められているのかなどを解説しています。
③について、資本投下に関する開示を作成するにあたり、「産業別の指標が、資本投下に関する開示の定めの全部又は一部を満たすために用いることができるかどうか」「資本投下に関する開示の定めを満たすために開示される情報と、関連する財務諸表において開示される情報とのつながり」といった事項を考慮する必要があるとしています。
④のテーマである「内部炭素価格」とは、「投資、生産及び消費のパターンの変化並びに潜在的な技術上の進歩及び将来の排出削減コストの財務的影響を評価するために企業が使用する価格」のことです。SSBJでは、主要な利用者にとって有用な情報となり得るなどの理由から、内部炭素価格の開示を求めています。⑤では複数の内部炭素価格を用いている場合の開示について、実際の開示例を示しながら解説しています。
⑥では留意点として、開示の対象となるカーボン・クレジットは通常、具体的な仕様計画があるものであると考えられると解説しています。また、カーボン・クレジットの質に関する情報が不足している場合は、オフセットとして認められない可能性があると考えられている点も解説されています。
これまでに公開されたハンドブックや、今回新たに加わったハンドブックは、SSBJの公式サイトに一覧で掲載されています。