緩和と適応の両面を考慮した目標設定へ、「適応とレジリエンスの移行計画への統合」を公表 NGFS
NGFS(The Network for Greening the Financial System、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)はこのほど、「適応とレジリエンスの移行計画への統合」(NGFS Integrating adaptation and resilience into transition plans)を公表しました。現在の移行計画は「緩和策」を中心としており、「適応策」を組み込むことの必要性を示すとともに、適応の指標と目標設定のための成熟度モデルを提案しています。
NGFSは中央銀行や世界の金融監督当局などで構成される国際的な枠組みです。気候変動は金融安定に対するリスクの増大をもたらしているとし、金融システムの安全性を保つことを目的に気候変動による金融リスクを監督・評価するとともに、気候変動に関する政策提言やシナリオなどを作成しています。
今般公表された文書は、G20サステナブルファイナンス作業部会(SFWG)へのインプットペーパーとして作成されました。SFWGでは、「適応と公正な移行のための資金拡大」を優先課題として捉えています。
現行の移行計画の多くは脱炭素に代表される緩和策が中心となっていると指摘しています。物理的リスクの顕在化が進むなか、適応への対応が遅れると金融システムに深刻な影響を及ぼす懸念があるとして、NGFSは、移行計画に適応策とレジリエンスを組み込む(統合する)方法を提案しています。また、より資金が不足している新興・発展途上国(EMDEs)においても対応が進むよう配慮して作成されました。
まず、気候変動による物理的リスクの影響は大きく、2050年に温室効果ガス排出量がネットゼロになったとしても物理的リスクの影響は強まる予測であると紹介。ネットゼロのシナリオにおいても気候変動によって世界の国内総生産(GDP)は8.5%減少する可能性があるという調査を紹介しています。
次に既存の移行計画フレームワークの5つの構成要素(ガバナンス、基盤、実施戦略、エンゲージメント戦略、指標と目標)を活用し、適応とレジリエンスに関する考慮事項を組み込む手法を示しました。適応策の計画は目標に基づいて支えられ、適切な指標によって補完されるべきだとし、緩和目標と適応目標の相乗効果を捉えることを目指しています。
なお同文書は主に金融機関のリスク管理に焦点を当てているものですが、示したアプローチは非金融機関にも適用可能だとしています。移行計画において適応策を組み込んでいくには、政府や公的機関による支援環境の整備が不可欠だとも記されています。