グロース市場の上場維持基準を厳格化へ、2030年3月から時価総額基準を引き上げ 東証
グロース市場の上場維持基準について東京証券取引所(東証)は、2030年3月1日以降に適用する見直し案を発表し、今月26日までパブリック・コメントを受け付けています。上場後の早期成長を促す観点から、時価総額の維持基準が大幅に引き上げられる内容となっています。東証はグロース上場企業へのサポートとして11~12月上旬に投資家が評価しているグロース上場企業の取り組み事例(好事例)を公表するとしています。
これまでグロース市場では、上場10年経過後の時価総額基準が40億円以上とされていましたが、新基準ではこの達成期限を5年に短縮し、時価総額も100億円以上へと引き上げます。つまり2.5倍の時価総額を半分の期間で達成することが求められます。
こうした変更は企業がM&A(企業の合併・買収)や事業提携などを通じて早期に成長を加速させることを後押しするものです。グロース市場が「Growth(成長)」の名の通り、高い成長を求める方針が反映されています。
基準の適用は2030年3月1日以降に最初に迎える事業年度の末日からで、該当日に時価総額が100億円未満である場合は、1年間の改善期間を経て上場廃止となります(監理銘柄・整理銘柄に指定した後、上場廃止)。ただ、「事業計画及び成長可能性に関する事項」において上場維持基準への適合を目指す計画(適合計画)を開示した企業は、この計画期間中は例外的に上場を継続できます(猶予期間)。
東証は過去の経験から、この猶予期間が不必要に長期化しないよう忠告しています。2022年4月施行の市場区分の見直しに際し、上場維持基準に関する経過措置が設けられました。このとき、長い期間の適合計画を開示した上場企業は投資者から評価されず株価が下落、かえって基準への適合が遠のく結果となりました。具体的には、プライム市場で流通株式時価総額基準(100億円)未達企業の時価総額の変化として、適合計画の計画期間が長いほど時価総額の減少率が大きく、3年超の計画期間では市場平均を下回るマイナスになったと紹介しています。
また、グロース市場からスタンダード市場への市場区分変更に関しては、直近1年間における利益が1億円以上という形式的要件を適用せず、利益額にかかわらず変更審査の対象となる見直しも発表されました。これは、利益を捻出するために企業が成長投資を抑制することがないよう設けられた措置です。成長戦略を維持しつつ適切な市場区分移行を可能とします。こちらは2025年12月をめどに適用される予定です。
なお、グロース市場への新規上場基準についての変更はありません。