東証の要請も影響しIRに対する意識が高まる、第32回「IR活動の実態調査」結果を公表 日本IR協議会
日本IR協議会は6月12日、第32回となる「IR活動の実態調査」の結果をまとめ、公表しました。同協議会会員のみならず2025年3月現在の全株式上場会社4,113社を調査対象とし962社から回答を得ました(回収率23.4%)。2023年3月に東京証券取引所(東証)が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請したことを受けて、経営トップを中心にIRに対する意識が高まっていると評価しています。東証が要請した対応のうち、現状分析の段階を終えて、具体的な改善策の開示や実行に進む企業が増加していると記しています。
2023年の東証の要請とは、プライム市場・スタンダード市場の全上場会社に対して「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」として、まず自社の資本コストや資本収益性について現状を分析し、その内容や市場評価を踏まえて改善に向けた計画を策定・開示し、その取り組みを実行、さらに投資家との対話を通じて継続的にアップデートしていく――という一連の対応を実施するよう求めたものです。
調査ではこの要請に関して、IRに対する意識の変化を尋ねています。IR担当部門・経営者・取締役会・CFO(最高財務責任者)の4者に対し、「意識が高まった」または「変化はない」のいずれかで回答を求めたところ、「意識が高まった」と答えた割合が最も高かったのはIR担当部門で82.5%(前回調査では73.7%)でした。次いで経営者が77.0%(前回調査では66.6%)、取締役会が72.4%(同63.5%)、CFOが70.9%(同61.6%)の順となり、いずれも7割を上回る高い割合となりました。
経営トップがIRに関与している企業向けに「経営トップ自らがIR活動へ関与することの成果」(複数回答可)を尋ねたところ、「自社の資本コストを上回る収益率や適正株価、妥当なPBR、PER、株主構成などを意識するようになった」と回答した企業の割合が前回調査よりも20.1ポイント増加し、62.2%と最も高くなりました。日本IR協議会は「東証の要請も契機となって大きな変化が見られた」と述べています。
東証は2025年4月1日からプライム市場上場企業に対し、英文開示を義務化しています。決算説明会資料を英語で開示する企業は7割を超えた一方で、動画配信については日本語が中心であり、英語で配信する企業は約2割に留まったとする結果が掲載されています。
2025年3月にはサステナビリティ基準委員会(SSBJ)からSSBJ基準が公表され、SSBJ基準に基づく開示の準備状況についても尋ねています。それによると、「対応には未着手」と答えた企業は50.0%と半数を占めました。その内訳はプライム市場上場企業が19.8%、スタンダード・グロース・そのほか市場上場企業が30.2%となりました。他方、準備している企業のうち最も割合が高かったのは、「2030年3月期以降の適用に向けて準備している」との回答であり、17.4%でした。
このほか調査では、非財務情報の開示に関する課題やIRツールの活用状況についても実態がまとめられています。調査結果の概要は日本IR協議会の公式サイトから確認できます。