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用語集

スチュワードシップ・コード

2014年07月28日

スチュワードシップ(Stewardship)が「財産管理の職務」と訳されることから、スチュワードシップ・コードとは“資産運用受託者(機関投資家)の行動規範“を意味します。なお、資産運用受託者(機関投資家)とは、“個人投資家”ではなく“法人投資家”を指し、大がかりな投資を行っている組織です。代表的な機関投資家としては「生命保険会社」や「投資信託会社」、「年金機構」などを挙げることができます。

日本版スチュワードシップ・コードとは

日本版スチュワードシップ・コードは、正式には「『責任ある機関投資家』の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~」(以下、日本版スチュワードシップ・コード)と呼ばれるものです。2014年2月に策定・公表されています。機関投資家が、建設的な対話を通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、中長期的な投資リターンの拡大を図ることを目的としたものです。
【参考:スチュワードシップ・コードの起源】
世界に目を向けますとスチュワードシップ・コードという考え方が世に広まり始めたのは、もう少し前になります。この言葉が広く知れ渡るようになったのは、2008年の金融危機がきっかけです。危機の2年後、2010年7月に、英国の財務報告評議会(FRC:Financial Reporting Council)が、「スチュワードシップ・コード」と呼ばれるガイドラインを策定・公表したのです。これは、英国企業株式を保有する機関投資家に向けたものです。同様の金融危機を決して起こすまいと、投資先である企業の経営監視... すなわち、コーポレート・ガバナンスへの取り組み強化を狙ったものです。

日本版スチュワードシップ・コードの中身

日本版スチュワードシップ・コードは、以下の7つの原則とその原則を補足説明した指針により構成されています。
 
原則1 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
原則2 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
原則3 機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである。
原則4 機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。
原則5 機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである。
原則6 機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定 期的に報告を行うべきである。
原則7 機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべきである。

日本版スチュワードシップ・コードの特徴

スチュワードシップ・コード最大の特徴は、「プリンシプルベース(principle-base)・アプローチ」と「コンプライ・オア・エクスプレイン」の2つを思想の柱に持っていることです。

プリンシプルベース(Principle-base)・アプローチ
本コードは、法令とは異なり、法的拘束力は有しません。したがって、機関投資家が従うべき詳細を定めることはせず、自らのスチュワードシップ責任を適切に果たすことができるよう、その趣旨・精神に照らして自らの活動が適切か否かを判断するための原則が定められています。

コンプライ・オア・エクスプレイン
本コードを受け入れる機関投資家は、「コードを受け入れる旨」(受入れ表明)およびスチュワードシップ責任を果たすための方針等を自らのウェブサイトで公表すること、当該公表を行ったウェブサイトのアドレス(URL)を金融庁に通知することが期待されています。但し、本コードに記載される原則と指針の全てを遵守しなければならないというものではなく、遵守しないものがある場合には、その理由や自らのスチュワードシップに対する取組みについて説明を行うことが求められるという内容となっています。
また、日本版スチュワードシップ・コードは英国版スチュワードシップ・コードを範としています(※【参考:スチュワードシップ・コードの起源】を参照ください)が、異なる点が2点あります。これらの違いにも、日本版の特徴を見いだすことができます。
一点目は、英国版における「英国版 原則5:機関投資家は、適切な場合には、他の投資家と協調して行動すべきである。」が日本版においては採用されていないことです。日本においては機関投資家の協調行動が一般的ではないことが不採用の背景にあったと推察されます。
二点目は、英国版にはなかった「日本版 原則7:機関投資家は~実力を備えるべきである。」が追加されていることです。これは機関投資家の意識向上を狙ったものです。コードの策定課程において、「企業と実りある対話を行うために投資家側も相当程度の見識を持つことが重要である」といった意見が有識者から出たことがきっかけになっています。

日本版スチュワードシップ・コードに期待されること

2015年現在、日本版スチュワードシップ・コードの受け入れを表明した機関投資家は、200弱に上ります※。コードを受け入れた機関投資家が、投資先企業の経営者などと面会し、自己資本利益率(ROE)の適切な向上を求めるといった動きが期待されます。他方、企業側としては、機関投資家の目線・考え方を知ることで自社が気づいていなかった課題に気づく機会が生まれ、それは企業価値向上の端緒となると考えられます。

ただし、スチュワードシップ・コードの目的である「建設的な対話を通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、中長期的な投資リターンの拡大を図ること」は、同コードさえ正しく機能すれば実現できるものではないというのもまた事実です。企業の外側からアプローチする規範(スチュワードシップ・コード)のみならず、企業の内部からアプローチする規範も必要になります。それが昨今話題になっているコーポレートガバナンス・コードです。

スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードは独立して存在するものではなく「車の両輪」に例えることができます。両輪がうまく回り始めた時に初めて、株式の持ち合い、銀行による企業支配、内輪の論理による取締役の解選任と取締役会の運営等が見直しを余儀なくされ、真の日本企業の改革が実現すると思われます。

※日本版スチュワードシップ・コードの受入れを表明した機関投資家は金融庁HPに掲載されています。『責任ある機関投資家の諸原則』≪日本版スチュワードシップ・コード≫~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~」の受入れを表明した機関投資家のリスト

(文責:小林 利彦

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