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用語集

ESG

2019年11月27日

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の総称です。企業におけるESGに関する課題や取り組み情報(ESG情報)は、主に機関投資家を中心に、企業の中長期的な価値を測る指標として使用されています。ESGに関する課題や取り組みとは、たとえば次のような図のものを指します。

 

ESGに関する課題や取り組み

出典:PRI、“What is responsible investment?”(最終アクセス:2019/11/25)を基にニュートン・コンサルティング作成

 

ESGの特徴

企業を評価する概念は複数ありますが、ESGには他の概念と比較し、2つの特徴があります。
・非財務的な観点から企業を評価する
・中長期的な企業の価値を評価する

非財務的な観点から企業を評価

ESGは企業評価に非財務的な観点をもたらしました。その背景には、従来の株価や売り上げ(利益)といった財務中心の評価方法への反省があります。財務中心の評価は企業の利潤追求姿勢を強めたことによりいくつかの問題を生み出しました。代表的には、下記の3つが指摘できます。


●問題1:異常気象を誘発し、サプライチェーンに悪影響をもたらした
従来の財務中心による企業評価は、企業の利潤追求活動をより一層促進し、エネルギーの大量調達・大量消費という社会構造を生み出しました。しかしそれらは二酸化炭素の大量排出を伴うものであり、少なからず地球温暖化の原因となったと指摘されています。その結果、生態系の変化や異常気象といった事象も誘発していると考えられるようになりました。さらに異常気象はサプライチェーンなどの企業活動に深刻な影響を及ぼしています。
そのため「環境」を考慮した企業活動が求められるようになりました。

●問題2:労働者の人権軽視を生み、社会全体の購買力低下を誘発した
これまで企業は、目先の利潤追求を優先するあまり、よりコストがかかると思われてきた社会的弱者の雇用には消極的でした。社会的弱者の一例として「女性」が挙げられます。育児に取り組む女性は時間を考慮する必要があり、雇用に必要なコストが割に合わないという誤った認識がなされてきたのです。
ところが近年、女性を含むより多くの人々の就労機会を担保することが消費者(顧客)の購買能力の創出につながると考えられるようになりました。言い換えれば、より多くの雇用を行うことで、結果的に企業活動に利益をもたらすという認識が広まったのです。
このように「社会」全体を俯瞰する投資活動が大きな意味を持つと認識されるようになりました。

● 問題3:ガバナンス軽視を生み、企業不祥事を引き起こす原因になった
世界に大きな影響を及ぼした不祥事の一つに、2008年に発生したリーマン・ショックがあります。リーマン・ショックの影響が甚大であった要因として、米リーマン・ブラザーズの社内ガバナンスが脆弱であったことが指摘されています。具体的には、短期的な利益を重視するあまり、貸し出しが容易なサブプライムローンを通じて返済能力の低い人にまで融資が行われていました。この事例から、金融機関の融資審査に関するガバナンスの重要性が改めて認識されました。ビジネスのグローバル化によって、企業不祥事は瞬時に世界的な影響を及ぼします。そのため「ガバナンス」に目線を向ける投資手法がより注目されるようになりました。

 

中長期的な企業の価値を評価

ESGを推進すると短期的な利益にとらわれない中長期的な観点に立った企業活動が期待されます。 たとえば、表1は実際に企業で行われているESG活動の一部を抜粋したものですが、いずれも中長期的な企業価値の向上を意識した活動であることがわかります。
 

【表1】ESG活動の施策例
要素 (実施企業)

Environment(環境)
●環境に配慮した製品の製造、販売(味の素、コニカミノルタ)
●製造プロセスへの再生可能エネルギーの導入(コニカミノルタ)
●使用済み製品のリサイクル(コニカミノルタ)

Social(社会)
●取引先へのCSR活動の要請(コニカミノルタ)
●女性の管理職への登用(コニカミノルタ、オムロン、丸井)
●健康経営実現のためのセミナー開催(オムロン)

Governance(企業統治)
●コーポレートガバナンスの機能強化(伊藤忠商事)
●リスクマネジメント体制の構築(伊藤忠商事)
●内部通報制度の拡充(丸井)

出典:味の素グループ「統合報告書2019」/コニカミノルタ株式会社「統合報告書2019」/オムロン株式会社「統合レポート 2019年3月期」/伊藤忠商事株式会社「統合レポート2019」/丸井グループ「ESGデータブック 2019年3月期」を基にニュートン・コンサルティング作成
 

ESGを取り巻く環境

ESGに期待される効果や社会的関心の高まりを受け、各国や機関投資家もESG活用の動きを進めています。加えて、大手企業を中心に、ESGを全社的リスクマネジメント(ERM)に活用する動きも注目を集めるようになってきました。

 

各国政府による推進

資産運用残高におけるESGの投資割合が2018年時点で約50%を占めている欧州※1では、ESG活動の情報開示を企業に義務づけています。2014年に発令されたEU非財務情報開示指令によって、EUに本社を置く大企業には非財務情報の開示が求められたのです。
具体例として、イギリスでは会社法で大企業及び中小企業に対して「戦略報告書」の提示を求めています。記載事項には環境問題やコミュニティー、人権に関する情報が挙げられており、ESG活動を促しています。
また日本も例外ではありません。政府や関係機関は、投資家に対して日本版スチュワードシップコード(2014年発行)を、そして企業に対してはコーポレート・ガバナンスコード(2015年発行)を通じてESGへの取り組みを求めています。これは日本市場をより活性化させる経済改革の一環として実施されており、今後も多くの企業や機関投資家の間で積極的な取り組みが進むと予想されます。

※1:Global Investment Alliance(2018), “Global Sustainable Investment Review 2018” 

機関投資家による推進

機関投資家と呼ばれる大口投資家もESGを推進しています。というのも、機関投資家は中長期的に資産を拡大させるミッションを負っており、その手段としてESGが有用であると考えられているからです。
実際、日本の機関投資家であるGPIF※2は以下の取り組みを実施し、ESGを考慮した企業活動及び投資の拡大を狙っています。

【GPIFによるESGへの取り組み】

●世界銀行との共同研究の発表

  • ESGの推進が各所で行われるよう、世界銀行と共に研究結果をまとめています。現在実施されている課題解決手法についても紹介し、企業、投資家 が ESGを推進しやすくなる方策を提示しています。
ステークホルダーとの対話
  • 株式運用会社との対話:株式を直接選定することに制限があるGPIFは、それを委託している運用会社にGPIFの選定方針を提示しています。
  • 上場企業向けアンケートの実施:上場企業619社に対し、ESGの推進状況などを調査するアンケートを実施しました。これを通じ、各企業でESGへの取り組みが進まない理由や課題の特定につなげています。
  • ESG指数の選定:ESGの普及を妨げている原因の一つとして、ESGそれぞれが何を指すのかが定義されていないことが指摘されています。GPIFは世界有数の機関投資家として、ESGの具体化に取り組んでいます。

※2:年金積立金管理運用独立行政法人の略称。厚生労働大臣より、国民年金と厚生年金における年金積立金の運用を委託されている行政法人。2015年に、ESGを規定するPRI(責任投資原則)に署名した
 
全社的リスクマネジメント(ERM)への活用

ESGに関するリスクが顕在化している昨今、企業における全社的リスクマネジメント(ERM)にも、その活用が始まっています。その背景にあるのは、ESGに関するリスクの切迫性が高まっていることが指摘できます。世界経済フォーラム(WEF)が2019年に発行した「グローバルリスク報告書」は、世界への影響が大きなリスクトップ10の内、約半数をESGに関するリスクが占めていると指摘しました。

世界的に脅威の度合いが高まっている現状を受け、COSO※3も2017年に「ESGリスクに関わるガイダンス」を発行し、企業のリスクマネジメントにESGを取り込むことを推進するようになりました。このガイダンスでは、ESGをリスクマネジメントに活用するにあたって必要な情報や、活用方法が紹介されています。言い換えれば、リスクマネジメントの重要な要素に、ESGが位置付けられたと考えられるようになったのです。

今後、リスクマネジメントの観点からもESGが推進されることが、想定されます。

※3:COSO: The Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission(米国トレッドウェイ委員会組織委員会)のことであり、元は米国において企業不正を正すために編成された組織です。これまでに様々な取り組みをしておきており、COSO-ERMのようなフレームワークを提示するなどしています。代表的なものには内部統制フレームワーク(COSOモデル)などがあります。

【参考文献】
  • UNEP (2007)Demystifying Responsible Investment Performance - A review of key academic and broker research on ESG factors-”
  • 環境省(2015)「第2章 地球温暖化の実態―科学は何を明らかにしたか―」『Stop The温暖化』
  • 伊藤正晴(2016)「ESGとCSR~期待される企業価値創造プロセスの開示~」大和総研
  • Principles for Responsible Investment (2016)「責任投資原則 2016」
  • Global Sustainable Investment Alliance (2016) “Global Sustainable Investment Review”
  • 年金積立金管理運用独立行政法人(2017)「平成29年度 ESG活動報告」
  • 持続可能性を巡る課題を考慮した投資に関する検討会(2017)「ESG検討会報告書」
  • 物江陽子(2017)「ESG投資と受託者責任―英米における議論と日本への示唆―」大和総研
  • CFA Institute (2017) “Environmental, Social and Governance (ESG) Survey”

(執筆:備酒 求

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