
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の総称です。ESGの概念は投資活動から生まれたものですが、現在では投資活動のみならず、経営や事業活動においても広くESGの考え方が取り入れられています。
ESGとは
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の総称であり、これらを考慮した投資活動や経営・事業活動を指す言葉として用いられます。2006年、コフィー・アナン国連事務総長(当時)が、機関投資家に対して投資分析と意志決定のプロセスにESGの課題を組み込むことなどを求める責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)を提唱したことが、ESGの概念が世界的に広まるきっかけとなりました。
ESGは投資活動から生じ、広まった言葉ではあるものの、近年では多くの企業でESGに配慮し、持続的な発展を目指すESG経営が目指されるなど、投資以外の活動においても使用されています。
日本でESGが重視されるようになった背景
日本においては、2014年2月に日本版スチュワードシップ・コード、2015年6月にコーポレートガバナンス・コードが策定されました。スチュワードシップ・コードは、機関投資家が投資先企業との建設的な対話を通じて持続的成長を促し、中長期的な投資リターンの拡大を図るための行動原則です。ここでは、機関投資家が把握すべき内容として、「投資先企業のガバナンス」や「社会・環境問題に関連するリスク」に言及されています。一方、コーポレートガバナンス・コードは、上場企業がコーポレート・ガバナンスにおいて遵守すべき事項を規定した行動規範であり、上場企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目的としています。
2015年9月には、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF:Government Pension Investment Fund)がPRIに署名したことで、ESG投資への注目度が高まるようになりました。さらに、2015年10月には、環境省が「持続可能性を巡る課題を考慮した投資に関する検討会(ESG検討会)」を設置。2017年1月に、ESG投資に関する理解の向上を目的とした解説書「ESG投資に関する基礎的な考え方」を公表しました。
なお、国際社会におけるサステナビリティやESGの重要性がますます高まる中、日本版スチュワードシップ・コードは2017年と2020年に、コーポレートガバナンス・コードは2018年と2021年に、それぞれ改訂されています。
ESG投資の手法
ESG投資とは、財務的な要素に加えて非財務的な要素であるESGを考慮する投資を指します。ESG投資にはさまざまな手法があり、サステナブル投資を推進する国際団体である世界持続可能投資連合(GSIA:Global Sustainable Investment Alliance)は、このような投資の手法を以下の7種類に分類しています。
ネガティブ/除外 スクリーニング (Negative/exclusionary screening) |
ESGの評価基準に基づいて、特定のセクターや企業などを投資対象から除外する手法 |
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ポジティブ/ベストインクラス スクリーニング (Positive/best-in-class screening) |
同業他社と比較してESGの評価が高いセクターや企業、プロジェクトに投資する手法 |
国際的規範に基づくスクリーニング (Norms-based screening) |
国際規範に基づきビジネスの実務に関する最低基準と照らし合わせて、投資対象のスクリーニングを行う手法 |
ESGインテグレーション (ESG integration) |
ESG要因を体系的かつ明示的に財務分析に取り入れる手法 |
サステナビリティ・テーマ型投資 (Sustainability-themed investing) |
サステナビリティに特に関係のあるテーマや資産に投資する手法 |
インパクト/コミュニティ投資 (Impact/community investing) |
社会や環境の問題を解決する目的に絞った投資を行う手法 |
企業エンゲージメント・議決権行使 (Corporate engagement and shareholder action) |
株主として対話や提案を行ったり、議決権を行使したりして、企業に対する影響力を行使する手法 |
GSIA「Global Sustainable Investment Review 2018」を基に作成。
なお、日本サステナブル投資フォーラム(JSIF:Japan Sustainable Investment Forum)が2024年12月に公表した「サステナブル投資残高アンケート 2024 調査結果速報」によると、日本では「ESGインテグレーション」が最も多く用いられる手法となっています。