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用語集

コーポレートガバナンス・コード

2015年07月01日

コーポレートガバナンス・コードは、上場企業がコーポレート・ガバナンスにおいて、遵守すべき事項を規定した行動規範です。なお、コーポレート・ガバナンスとは、経営者を律するための仕組みであり、一般的には企業の業務執行監視を行う取締役会や、そうした取締役(会)などの活動を監視する監査役、社外取締役などといった機関のあり方を指します。

以前より、類似の行動規範(上場会社コーポレート・ガバナンス原則)が存在していましたが、これを置き換える形で東京証券取引所(東証)が定め、2015年6月1日から施行しました。いわゆる「攻めのガバナンスの実現」を目指した置き換えであり、より実効性ある原則の提示を通じて、健全な企業家精神の発揮を促し、会社の持続的な成長と中長期的な会社価値の向上を図ることに主眼をおいています。

ちなみに、コーポレートガバナンス・コードに良く似たものとして、スチュワードシップ・コードがあります。両者ともに同じ目的を掲げたものですが、対象者が異なります。コーポレートガバナンス・コードが企業に向けた行動規範であるのに対し、スチュワードシップ・コードは、株主(機関投資家)に向けた行動規範です。スチュワードシップ・コードについて詳しくお知りになりたい方は、こちらをご覧ください。

コーポレートガバナンス・コードの構成と特徴

コーポレートガバナンス・コードは、日本取引所のホームページ上からダウンロードすることができます。全体で36頁あり、本編は全5章から構成されています。

【コーポレートガバナンス・コードの目次】
  1. コーポレートガバナンス・コードについて
  2. 基本原則一覧

第1章 株主の権利・平等性の確保
第2章 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
第3章 適切な情報開示と透明性の確保
第4章 取締役会等の責務
第5章 株主との対話
・資料編

コーポレートガバナンス・コードにおける最も注目すべき特徴の1つとしては、行動規範の根本的な思想を挙げることができます。本コードでは「プリンシプルベース・アプローチ」(原則主義)を基本にした「コンプライ・オア・エクスプレイン」方式が採用されています。「行動規範に規定する内容について、原則的には遵守すべきだが、できない(やらない)場合は相当の理由を説明すべきだ」という意味です。たとえば、【原則1-5】において次のような事項が述べられています。ここでは不適切な目的の買収防衛策を講じてはならない旨を述べていますが、もし対策を講じるのであればその理由について説明しなければならないとも述べています。これが「コンプライ・オア・エクスプレイン」の考え方です。

【原則1-5.いわゆる買収防衛策】
買収防衛の効果をもたらすことを企図してとられる方策は、経営陣・取締役会の保身を目的とするものであってはならない。その導入・運用については、取締役会・監査役は、株主に対する受託者責任を全うする観点から、その必要性・合理性をしっかりと検討し、適正な手続を確保するとともに、株主に十分な説明を行うべきである。

※コーポレートガバナンス・コードより引用

こうした特徴のほかにも、目次を見ただけでも、その特徴が見えてきます。たとえば、“株主”という言葉が何度も登場していることから、株主との健全な関係を保つために順守すべき事項を示していることが分かります。これを裏付けるものが、5章に登場する“株主との対話”です。これは旧行動規範(上場会社コーポレート・ガバナンス原則)にはなかったものです。ここでは具体的には、上場企業は、株主総会の場以外においても株主との間で建設的な対話を行うべきとし、取締役会は、株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みに関する方針を検討・承認し、開示すべきといった旨を述べています。

そのほか、コーポレートガバナンス・コードの特徴をいくつか次に挙げておきます。

  • 従来の「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」では”~期待されている”という表現だったものが、本コードでは”~すべきである”というより強い表現に変っている
  • 本コードは改正会社法の定めに則り、新しい三つの機関設計(監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社)を基に説明がなされている
  • 五つの基本原則の下に幾つかの原則及び補充原則が設けられ、全体的に詳細にわたって記述されている。取締役会等の責務をより具体的に説明しており、社外取締役については2名以上選任すべきとしている(関連する箇所:基本原則4)
  • 様々なステークホルダーとの協業が不可欠であることを十分に認識すべきとし、ESG(環境、社会、統治)問題への積極的・能動的対応を含めることが示唆されている(関連する箇所:基本原則2)
  • 上場会社は、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきとしており、特に現状の非財務情報では具体性を欠く記述となっており、付加価値に乏しい場合が少なくないとの指摘があることから、取締役会の積極的な関与を示唆している(関連する箇所:基本原則3)

上場企業に求められるアクション

本コードが施行された2015年6月1日以降に定時株主総会を開催した上場企業は、遅くともその6か月後までにコーポレート・ガバナンス報告書を提出する必要があります。特に本コードを実施しない場合は、コーポレート・ガバナンス報告書にその理由を説明しなければなりません。但し、マザーズ・JASDAQ上場企業に関しては、コードのうちの「基本原則」部分を実施しない場合に限り適用されます。

本コードがもたらす影響

本コードで採用された「コンプライ・オア・エクスプレイン」は、既に改正会社法やスチュワードシップ・コードにも採用されていますが、日本人には馴染みの薄い手法であるとも言えます。したがって定着するまでにはある程度の時間を要するものと思われます。が、その影響は確実に出始めています。

たとえば、本コードが施行された6月1日前後から、各上場企業において活発な動きがなされています。前段にて、本コードの基本原則2では社外取締役の最低2名以上の選任が求められていると述べましたが、宇宙飛行士や科学者、スポーツ関係者など異分野の著名人を招く企業が増えているとの報道もなされています。また、買収防衛策についても動きがみられます。意義が不明な買収防衛策が多かったのか、廃止する上場企業が相次いでいます。さらに、本コードでも言及されている政策保有株式・・・いわゆる持ち合い株式について、その売却が一段と加速しているとも言われています。日本経済新聞社によれば281社のうち168社が14年度に保有銘柄の数を減らしたとの報道がなされています(日本経済新聞2015年7月16日朝刊記事より)。

本コードの原則の履行の態様は会社の業種等により様々に異なり得るとしており、原則の適用の仕方は、全ての原則を一律に実施しなければならない訳ではないことには十分な留意が必要です。ゆえに「買収防衛策をとりやめる企業が増えているからうちもやめる」といった短絡的な考えではなく、会社側、ステークホルダー側双方が、当該手法の趣旨を理解し、会社の個別の状況を十分に尊重した取り組みを行っていくことが肝要です。

(文責:小林 利彦

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