日本経済団体連合会(経団連)は15日、有価証券報告書を株主総会前に開示することについてアンケート調査した結果を公表しました。加藤勝信金融相は今年3月、上場企業の代表者宛てに「株主総会前の適切な情報提供について(要請)」を発出、株主総会よりも前に有価証券報告書を提出・開示するよう求めました。経団連の調査は、要請後の企業の対応などを調べたものです。
アンケート調査は今年5~6月にかけて会員企業・団体を対象に実施されました。回答企業数は260社で内訳は東京証券取引所(東証)プライム企業が218社、同スタンダード企業が29社、同グロース企業が6社、名古屋証券取引所メイン企業が1社、非上場企業が6社でした。
4月1日から翌年3月末を事業年度とする日本の企業は多く、上場会社の6割弱程度が3月期決算会社といわれています。経団連の調査に回答した企業260社においても3月期決算会社は205社と回答企業の約8割を占めました。
経団連のアンケート調査ではまず、有価証券報告書の株主総会前の提出について検討状況を尋ねたところ、回答企業の69.6%(181社)が「当年度(今年3月31日から来年3月30日に終了する事業年度)に実施」と答えました。金融庁資料でも、大臣要請を受け、株主総会前に有価証券報告書を開示した3月期決算会社は全体の57.7%となり、前期比55.9ポイント増となりました(前期は1.8%)。
ただ、アンケート調査の自由記載欄には、「当面は1日または数日前開示を行うことになると考えられるが、それでは投資家等のニーズに対応できないと考えている」といった回答があったことを紹介しています。金融庁資料においても総会前に有価証券報告書を開示したとする企業の64%程度は開催日1日前であったとまとめられています。
次に、株主総会前に有価証券報告書を提出した181社に対し、対応負荷を尋ねています。「一定の対応負荷があったが、実務上の大きな混乱はなかった」と回答した企業が最も多く64.6%、次いで「かなり対応負荷が高かった」(20.5%)となりました(有効回答数は161)。現場の実態がわかる回答として「これまで4月から6月にかけて分散していた『会社法上の計算書類』『決算短信』『有価証券報告書』の作成業務が、すべて5月中旬までに集中する」といった回答が紹介されています。
加藤金融相の要請を受け、株主総会の1日前に有価証券報告書を開示する企業が多くみられました。しかし要請では、開示は株主総会の3週間以上前に行うことが最も望ましいと記されています。これを実現する方法として株主総会の開催時期を後ろ倒しにする方法が指摘されています。この件についてもアンケート調査では尋ねています。大多数の企業は「現状では検討していない」と回答し84.8%を占めました。ついで「検討中ではあるが、具体的な目標年度や対応スケジュールは未定」が14.8%となりました。後ろ倒しにするには、実務上の制約が大きいとする意見が多く寄せられました。