経済産業省は4月30日、「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」を公表しました。
政府による「日本再興戦略改訂 2014」では、日本企業の「稼ぐ力」の強化(=中長期的かつ持続的な収益性・資本効率の向上)を実現するための施策として、コーポレートガバナンス(CG)の強化が掲げられました。その後10年以上が経ち、日本企業におけるCGの取り組みは進展した一方で、「コーポレートガバナンス・コード」に従うことが目的化し、形式的な体制整備にとどまっている例もあります。そして、企業を取り巻く経営環境はさらに複雑化しています。
こうした中、TOPIX500を構成する企業を主な対象に「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」が公表されました。「稼ぐ力」の強化に向けたCGの取り組みを後押しすることを目的としたガイダンスで、CGの考え方を整理するとともに、CGのあり方・取り組みを検討する上でのポイントをまとめています。
「稼ぐ力」の強化に向けたCGに取り組む上で、本ガイダンスの中で主要なメッセージとして掲げられているのが「『稼ぐ力』を強化する取締役会5原則」です(①価値創造ストーリーの構築②経営陣による適切なリスクテイクの後押し③経営陣による中長期目線の経営の後押し④経営陣における適切な意思決定過程・体制の確保⑤指名・報酬の実効性の確保)。
①の「価値創造ストーリー」とは、長期的に目指す姿の実現に向けて、どのようなビジネスモデルを通じ、どのような社会課題を解決し、どのように長期的な企業価値向上に結びつけるかをまとめたストーリーのことです。企業は、自社の競争優位性を伴った価値創造ストーリーを構築し、実行することが重要となっています。そして、経営陣が迅速にストーリーの構築・実行を意思決定する環境を整備する必要があります。
⑤は、最適なCEOの選定と報酬政策の策定を行うという原則です。また、⑤では①~④の内容を踏まえてCEOを評価し、再任・不再任を判断するという原則になっています。
なお、「『稼ぐ力』を強化する取締役会5原則」も含め、「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」の記載内容は、拘束力を持つものではありません。あくまでも企業にとって役立つ取り組み例を示したものとなっています。