出資を受け入れ価値創造へ、「企業価値向上に向けた海外資本活用ガイドブック」を公表 経産省
経済産業省はこのほど、「企業価値向上に向けた海外資本活用ガイドブック」を公表しました。海外資本を活用するにあたってのメリットと留意点およびリスクを整理した上で、海外資本の活用に向けて取るべき行動、先行企業の事例などを記しています。
「企業価値向上に向けた海外資本活用ガイドブック」は「企業価値向上に向けた海外資本活用に関する研究会」(経済産業省)での議論(全3回)を踏まえて取りまとめられました。同研究会は第1回会合を今年1月に開いていました。
ガイドブックによると、海外プレイヤーとの協業や資本・業務提携を積極的に進めることは、企業価値を高めるための有力な選択肢といえます。過度な自前主義では、市場環境が変化するスピードに対応できなくなるなどと指摘しています。
ガイドブックは2部構成です。第1部では、日本企業が海外資本活用を具体的に検討するに当たって備えておくべき基礎知識を提示しています。海外資本活用の類型や動向、プレイヤー構造、基本的プロセス、有効性、留意点・リスクが説明されています。
海外資本を活用するとは、海外事業会社や海外PEファンドから出資を受け入れるということです。ガイドブックでは出資比率を問わず、合併▽買収▽事業譲渡▽資本参加▽出資拡大――について説明しています。こうした出資の受け入れ形態は企業の規模や目的によって変わります。
海外出資を受け入れることによって経営ノウハウや技術、グローバルネットワーク、ビジネスモデルの導入につなげられるとしています。具体的には、①経営基盤②従業員③事業展開の3つの観点からメリットを説明しています。
他方、海外資本活用の留意点とリスクについては、協業時の留意点▽企業価値の棄損リスク▽外為法の遵守▽出資受け入れに係る負担――を説明しています。例えば、自社の技術・データなどが流出したり、知的財産権に関する不当なライセンス契約によって自社が不利な立場になったりするリスクが挙げられています(企業価値の棄損リスク)。
出資者から権利化されていないノウハウや技術を含む、知的財産権等を移転するよう要求されることもあるとし、その際はその価値が正当に評価されているかどうか、確認する必要があると記しています。さらに、悪意のある出資者が日本企業の有する知的財産の獲得を目的として、役員を派遣するケースもあるとし、役員指名権の有無やそのアクセス権の範囲などについて精査すべきであると記しています。
第2部では海外資本活用の有効性を高めるために日本企業の経営者層に期待される基本的行動が提示されています。具体的には、①戦略の明確化と選択肢の見極め②中長期的な価値を実現できる経営手段の精査③価値の源泉・リスクを踏まえた主体的な交渉④従業員や取引先への前向きなメッセージの発信⑤対話の継続による信頼関係構築と価値実現――の5つです。
5つの基本的行動を実践しながら海外資本を活用し、企業価値の向上を実現した日本企業5社の成功事例も掲載されています。