「経済安全保障」着手促す、2025年版ものづくり白書公表 経産省/厚労省/文科省
経済産業省、厚生労働省、文部科学省の3省が共同で作成した2025年版「ものづくり白書」(製造基盤白書)がこのほど、経済産業省のホームページに公表されました。製造事業者に向けて脱炭素と経済安全保障を複合的に捉え、中長期的な成長を見据えた投資を行うことが重要だというメッセージが示されています。
製造事業者の持続的な成長のためには、経済安全保障の重要性が一段と高まっています。世界の経済産業政策では近年、産業競争力を強化するため脱炭素と経済安全保障を切り離して考えるのではなく、複合的に捉えて政策を推進する傾向が顕著です。白書でも脱炭素といった環境適合およびDXの取り組みと並んで経済安全保障への対応は急務だと記しています。
一方、白書には事業者が経済安全保障について認知はしているものの、その多くは具体的な取り組みにはつなげられていないと評価できる調査結果が掲載されています。製造事業者に対して環境適合・DX・経済安全保障の3点について取り組み実施状況を尋ねたところ、環境適合とDXについては約6割の事業者が「行っている、又は検討を開始した」と回答した一方、経済安全保障については約6割の事業者が「行っていない」と回答しました。
実施していない理由として最も多かったのは「自社の経営において必要性を感じない」、次いで「何をすべきかわからない」でした。まずは「自社にとっての必要性を理解することが必要」であり、政府としても取り組みの好事例を発信したり、官民対話を通じて理解促進に取り組んだりする必要があると記しました。
経済産業省では3月、経済安全保障上の課題に対応するための民間企業の好事例をまとめた「民間ベストプラクティス集(第2版)」を公表しています。これは、組織体制の構築▽技術流出の対策▽サプライチェーンリスクへの対策という3つの観点から企業の取り組みを紹介したベストプラクティス集です。白書ではこの文書を紹介するとともにまず、経営層がその重要性を強く認識し、社内の体制整備を主導していくことが重要だと強調しました。
また、収録コラムでは先行事例として、コーポレート部門であるグローバル渉外統括本部内に経済安全保障室を設置した企業などの取り組みが紹介されています。
このほか、製造業の業況や就業および教育・研究開発などの動向を分析したものや、政府がものづくり基盤技術の新興に関して講じた施策などがまとめられています。