「経済安全保障センター」(仮称)の設立を明記、「経済安全保障に関する産業・技術基盤強化アクションプラン(再改訂)」を公表 経産省
経済産業省はこのほど、「経済安全保障に関する産業・技術基盤強化アクションプラン」(以下、アクションプラン)の再改訂版を公表しました。アクションプランは2023年10月に初めて策定された、経済安全保障推進法に基づいた具体的な実行計画の一つです。2024年5月に改訂されたのに続き、今般再改訂されました。日本を取り巻く経済安全保障環境はこの1年で大きく変化し一層厳しさを増していると指摘、経済安全保障政策の更なる強化を訴えています。
公表されたアクションプランは現状の分析を示した上で、取り組みの方向性を示しています。
まず、日本の経済安全保障を取り巻く環境変化として4つの主要領域を俯瞰しています。具体的には、①大国の「製造業」を中心とした安全保障戦略と自由主義的な国際経済秩序の揺らぎ②大国による新たなテクノロジー秩序の形成(AIを中心に)③エネルギー戦略の重要性の高まり④次世代の自律性・不可欠性を巡る戦略分野における競争激化――です。
国家安全保障の概念は経済や技術に拡大しています。①では、米国と中国における、先端技術分野を中心とした国境措置を示した年表(2025年5月23日時点)が掲載されています。米国は安全保障の観点から先端半導体の輸出管理を相次ぎ強化していることや、中国は優位性のある重要鉱物の規制を強化していることがわかります。
日本の国益を支えているものは「自由で開かれた貿易体制」であるのに、そうした自由貿易体制や国際公共財の提供体制が揺らいでいると指摘。国境措置の応酬に対応するため企業がサプライチェーンを組み替えることを支援したり、国境措置に対して輸出耐性を高めるため国内の「不可欠性」を強化したりすることなどを官民で進める必要があると記されています。
次に、新たな国際環境下での産業・技術基盤強化に向けた今後の政策や施策の方向性が示されました。取り組みは①産業支援策(Promotion)・産業防衛策(Protection)・国際連携・官民対話(Partnership)といった「3つのP」の一層の有機的連携②国際公共財としてのルールベースの国際経済秩序の再構築③官民対話の推進④経済インテリジェンス強化――の4つに整理されています。
民間事業者にとって経済安全保障につながる取り組みは、中長期的には利益につながる一方、短期的にはコスト増や利益圧迫となる場合もあります。経済安全保障の観点で行った経営判断や取り組みについてステークホルダーから理解を得られやすいよう、経済産業省は行動規範やガイドラインの策定を進めます。初版の公表は2025年秋頃を目指すとしています。
「経済安全保障センター」(仮称)の設立も明記されています。同センターは、政府が実施する調査分析に必要な情報・知見の提供と、成果の体系化・構造化を行うとともに、官民連携の中核組織としての機能を担います。