G7サミットに向けて「経済安全保障とレジリエンスの強化」をテーマとする共同提言を発出 B7サミット
日本経済団体連合会(経団連)をはじめとする、先進7カ国(G7)各国の経済団体は5月にカナダでG7ビジネス・サミット(B7)を開催し、共同提言を発出、公表しました。今年の共同提言は「Bolstering Economic Security and Resilience」(経済安全保障とレジリエンスの強化)と題されています。経済安全保障の課題は、貿易、人工知能(AI)、エネルギーなどと交差するテーマであり、G7各国の経済界が直面する主要課題に対する政策提言がまとめられています。
B7という略称は「ビジネス(Business)」の頭文字「B」をとったもの。B7はG7各国の経済界を代表する関係者が参加し、G7サミットの開催に先立ってその年の議長国で開催されます。今年はカナダ商工会議所が議長を務め、日本では経団連が代表団体を務めています。ビジネス界からの政策提言としてB7は共同提言をG7サミットに向け発出しています。
共同提言の内容は、経団連やカナダ商工会議所のWebサイトなどで公開されています。同文書は、全体像を簡潔にまとめたエグゼクティブサマリーと、G7に協調的リーダーシップを求めたイントロダクション、重点課題、本編(第1~4章)で構成されています。
重点課題(Spotlight)では、重要鉱物・資材の安定した供給体制の確立について取り上げられています。重要鉱物はAIや防衛分野でも不可欠な素材であるため、戦略的な確保が求められます。一方で、重要鉱物のサプライチェーンが特定の国に依存している状況について、供給不足や価格高騰を招くリスクがあり、国家安全保障や経済の安定性を脅かす可能性があると指摘しました。
本編は、第1章「予測可能で効率的なグローバル貿易の推進」、第2章「責任あるAIとデジタルの可能性の実現」、第3章「安全でクリーンなエネルギー経済への投資」、第4章「システム全体の安全保障とレジリエンスの強化」という4つのテーマが取り上げられています。
AIについては、人材不足やインフラの制約、規制の不確実性といった課題が障壁になっているとしました(第2章)。例えばインフラ面ではAIの高度化と利用拡大に伴いデータセンターの需要が急増し、電力需要も大幅に増加すると予測されています。そのため政府が十分な電力供給を確保し、小型モジュール炉(SMR)などの新しい発電技術・インフラへの投資を促すべきなどと提言しています。
また、サイバー攻撃は経済的損失を超えて、国家安全保障にも重大な脅威をもたらすと指摘しました(第4章)。デジタルインフラを守るうえで民間企業は重要な役割を果たしています。国境を超えたサイバー脅威に対抗するため、G7はサイバー防衛、情報共有、法執行機関の連携を強化すべきと提言しました。例えば、コンプライアンスの相互承認の枠組み、セキュアなソフトウェア開発のための統一基準、インシデント報告の簡素化などを推進するよう提案しています。