周辺国の軍事バランスを注視し総合的な防衛体制を強化へ、令和7年版「防衛白書」を公表 防衛省
防衛省はこのほど、令和7年版の防衛白書を公表しました。防衛白書は安全保障環境や防衛省・自衛隊の取り組みを取りまとめたもので、国防の現状と課題を記しています。令和7年版では、令和5年より推進している「防衛力の抜本的強化」の進捗のほか、2025年3月に新設された統合作戦司令部、自衛官の処遇・勤務環境改善の施策などが新たに明記されました。
統合作戦司令部は、陸・海・空自衛隊の主要部隊や、宇宙・サイバー領域などで活動する部隊を平時から一元的に指揮し、作戦全般を掌握することで最適な防衛力を配分することにより、迅速かつ効果的な統合作戦を行う部隊としています。
周辺国の軍事動向に関しては、ウクライナ侵略で明らかとなった北朝鮮からロシアへの兵士派遣や武器供与に触れ、ロシアと北朝鮮の軍事協力が進展することで、今後ロシアより核・ミサイル関連技術が北朝鮮へ移転し、インド太平洋地域の軍事バランスに影響を与えるおそれがあると言及しています。加えて、イスラエルとイランに代表される中東情勢の悪化により、米国が軍事的な戦力などを傾けることで各国の安全保障環境に多層的な影響を及ぼす可能性があると指摘しています。
また、米トランプ政権の安全保障戦略においては引き続き中国を注視していると分析しました。米トランプ政権の掲げる「力を通じた平和」を実現するための3つの柱の一つが「抑止力」であり、特にインド太平洋地域において中国のもたらす侵害の抑止を米国防長官が言明したことに触れ、第2次政権でも中国は、国際秩序を再構築する意図とそれを実現する経済力、外交力、軍事力、技術力を併せ持つ同格の競争相手とする認識が継続しているという見解を示しました。
日本に対する侵攻への対応については、「認知領域を含む情報戦への対応」が新たに加えられました。近年、偽情報の流布や社会の分断を目的とした情報の拡散などにより相手国の世論や政府の意思決定に影響を及ぼす情報戦への懸念が高まっているとし、対応力強化の重要性を訴えています。
このほか、宇宙領域の体制整備の一環として宇宙作戦団(仮称)を新編し、SDA衛星の打ち上げによる宇宙領域の状況把握能力を強化することとサイバー攻撃への対応能力の強化を明示しました。
特に、総合的な防衛体制の強化を進めるため指定された4分野のうちの一つ「サイバー安全保障」分野では、2025年5月にサイバー対処能力強化法および同整備法が成立しました。政府は同法を基に国や重要インフラなどの安全を確保しサイバー攻撃への対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させることを目標に掲げており、防衛省・自衛隊はサイバー人材の確保に重点的に取り組むなど関係省庁と連携していくとしています。