九都県市首脳会議(※)の防災・危機管理対策委員会はこのほど、提案書を2点とりまとめ、内閣府や総務省など関係省庁へ郵送で提出すると発表しました。同委員会のWebサイトによると、同様の提案書の提出は2020年以来5年ぶり。
提案書は「地震防災対策等の充実強化」と「国民保護の推進」の2点です。それぞれ九都県市首脳会議防災・危機管理対策委員会や東京都などのWebサイトで公開されています。
「地震防災対策等の充実強化」については、19の提案項目が記されています。2020年の提案書では11項目であったため、前回よりも充実した内容を具体的に働きかけています。
例えば、「訪日外国人旅行者等に向けた防災情報等の発信強化」や「ライフライン施設の耐震化」、「避難所環境整備に資する大型資機材等の確保に係る支援」などが新たに加わりました。
能登半島地震では通信障害や断水が発生したほか、避難所の環境改善がいまだに進んでいないと批判されました。「ライフライン施設の耐震化」では、発電・送電システムの耐震性の向上や、衛星通信回線によるバックアップ体制の構築を含む通信の多重化策の促進といった対策を、「避難所環境整備に資する大型資機材等の確保に係る支援」では、ベッドやキッチンカー、トイレ・シャワー関連設備、大型エアーテント、発電機、空調設備といった大型資機材の確保について財政支援を継続・拡充すること、自治体単独では保管スペースの課題があるとして国に常備ストックの拡充を求めるとともに発災時には配送オペレーションが円滑に進むよう仕組みの導入といったことなどを提案しました。
また、富士山噴火による降灰への備えについても記載がより具体的になりました。具体的には7項目に分けて対策に取り組むよう提示しました。降灰予報の制度向上や広域降灰に対応する注意報・警報の導入、大量の火山灰の最終処分に関する法的整備などを挙げています。
もう一つの提案書である「国民保護の推進」については、8つの提案項目が記されています。2020年の提案書では6項目でした。具体的には「緊急一時避難施設の整備」が新たに記されました。
緊急一時避難施設とは、ミサイル攻撃の爆風などから身を守るために指定される、既存のコンクリート造りの堅牢な建物や地下施設などです。提案書では既存の建物などを改修して緊急一時避難施設として活用できるように、改修費用の財源を措置することを提案しています。ただ、緊急一時避難施設は直接被害を軽減するための1~2時間程度の避難先となるため、地下シェルターを含む避難施設のあり方について国において調査・検討を進め整備方針を示すよう提起しました。
※九都県市首脳会議は埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県の知事と、横浜市・川崎市・千葉市・さいたま市・相模原市の市長で構成される会議体。防災・危機管理対策委員会のほか、環境問題対策委員会や廃棄物問題検討委員会などがあります。