知的財産推進計画2025を決定、新たな国際標準戦略も策定 政府
政府は6月3日、第54回知的財産戦略本部を開催し、知的財産推進計画2025を決定しました。同計画は知財戦略の重点施策を取りまとめたもので、今年は「IPトランスフォーメーション」を打ち出し、戦略の3本柱として①イノベーション拠点としての競争力強化②AI等先端デジタル技術の利活用③グローバル市場の取り込み――を掲げています。
IPトランスフォーメーションとは、企業の競争力の源泉となる技術力やコンテンツ力、クールジャパンに代表される国家ブランド力といった知的資本を活用し、国内外の社会課題の解決を図る「新たな知的創造サイクル」の構築を目指すこととされ、KPIとして2035年までに▽世界知的所有権機関(WIPO)の「グローバルイノベーション指数」の上位4位以内▽日本市場(日経225)における時価総額に占める無形資産の割合を50%以上――が設定されています。グローバルイノベーション指数は2007年に4位となったものの、2024年は13位でした。日本市場(日経225)における時価総額に占める無形資産の割合は2020年時点で32%であり、これは米国市場(S&P500)の90%や韓国市場(KOSDAQ COMPOSITE INDEX)の57%よりも低い値となっています。
AIについては、イノベーション促進とリスク対応の両立を図るAI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)の考え方を踏まえ、「AI技術の進歩の促進」と「知的財産権の適切な保護」の両立を図ります。権利者やクリエイターが持つ懸念への対応としては、①法②技術③契約の各手段を組み合わせた取り組みを促進します。AI開発の透明性確保については、石破茂首相が知的財産戦略本部において「方策を『指針』において具体化する」と語ったと首相官邸が発表しています。KPIとしては「日本企業のAIの利活用率を概ね100%まで高める」と設定されました。
AIの急速な進化をうけて、AI関連発明の特許出願が増えています。加えてAIを利用して発明したものについて特許権をAI開発者にも認めるかどうかといった議論が注目を集めています。知的財産推進計画2025では、AI利用発明の「発明者の定義」についての検討とその明確化に向けた対応を進めると示されました。
グローバル市場の取り込みに向けては、19年ぶりに新戦略「新たな国際標準戦略(国際社会の課題解決に向けた我が国の標準戦略)」を策定しました。国際標準化に向けた17の重要領域を設定するとともに、8つの戦略領域(環境・エネルギー/食料・農林水産業/防災/デジタル・AI/モビリティ/情報通信/量子/バイオエコノミー)においてはルール形成を日本が主導することを目指し、官民の資源を優先的に投下すると記されています。日本がルール形成を主導することにより、市場創出を狙っています。