生成AIに関する記載を拡充、AI事業者ガイドラインの第1.1版を公表 経産省/総務省
経済産業省と総務省は3月28日、「AI事業者ガイドライン」の「1.1版」を公表しました。事業者へのアンケートや動向調査などを踏まえて内容を更新しました。「1.1版」をとりまとめたAI事業者ガイドライン検討会では、2024年度中に更新版を公表できるよう議論してきました。
AI事業者ガイドラインとは、AIの開発者・提供者・利用者などさまざまな立場の事業者を対象にしたAIガバナンスの統一的な指針です。AIを活用する者がAIのリスクを正しく認識し、自主的に必要となる対策を実行できるよう、経済産業省と総務省がそれぞれ公表していた複数の既存ガイドラインを統合するかたちで2024年4月にとりまとめられました。
ガイドラインは策定当初からLiving Documentとして、更新が必要な事項を検討することとしていました。AI事業者ガイドライン検討会は今般、更新点を7つに絞り、ガイドライン本編と別添のそれぞれで更新しました。
更新が必要とされた点は①AIによるリスクの洗い出し・分類②AIの契約に関する留意事項③生成AIに関する記載の追加④AIガバナンスに関する事例の充実⑤AIガバナンスの動向等の反映⑥特定単語の整理・見直し⑦その他――の7つです。例えば「③生成AIに関する記載の追加」では、生成AIによる便益やリスク、配慮すべき事項などが追記されました。具体的には、マルチモーダルな生成AI(2つ以上の異なるモダリティから情報を収集し、それらを統合して処理することができる生成AI)、RAG(検索拡張生成)、プログラムコードの生成などに関する記載が拡充されました。
事業者へのアンケートやヒアリングでは「リスクベースアプローチ」や「人材不足」に関する課題が寄せられたとし、これらの対応が「実践例」や「実践のポイント」に追加されました(「④AIガバナンスに関する事例の充実」)。
「⑤AIガバナンスの動向等の反映」では、広島AIプロセスのもと、「国際行動規範」の遵守状況をAI開発企業などが自ら確認し報告するための手法が2025年2月から運用開始となったことや、2024年8月に欧州連合(EU)で発効されたAI法(AI Act)などが追記されました。
「⑥特定単語の整理・見直し」では、「バイアス」「多様性・包摂性」「透明性」などAIガバナンスにおいて重要な単語の定義や表現が見直されました。
なお、総務省の資料によると、AI事業者ガイドラインの認知度は79%、活用状況は40%(「AI事業者ガイドラインを活用したことがある」と回答した割合)でした。また、AI事業者ガイドラインではなく、経済産業省や総務省による既存のガイドライン(AI開発ガイドライン、AI利活用ガイドライン、AI原則実践のためのガバナンスガイドライン)のいずれかを活用したことがあると回答した割合は11%、AI事業者ガイドラインを含めていずれも活用したことがないが、今後活用する予定と回答した割合は33%となりました(調査対象企業は80社)。