政府は2月28日、AIに特化した国内初の法案となる「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案」(以下、AI法案)を閣議決定し国会へ提出しました。AI法案はAI制度研究会がとりまとめた「中間とりまとめ」に沿って設計されました。法案の条文には、国が調査する権限を持ち、事業者などへ指導・助言できるとした内容が盛り込まれています。
内閣府が公表したAI法案の概要および要綱によると、イノベーションを促進しつつリスクに対応するため、既存法に加えて新たな法律が必要だとして新法を策定しました。AI法案は、第一章「総則」、第二章「基本的施策」、第三章「人口知能基本計画」、第四章「人口知能戦略本部」および「附則」で構成され、「罰則」を規定する条文はありません。2月4日付けで決定した「中間とりまとめ」によると、イノベーション促進とリスクへの対応の両立を確保するため、法令とソフトローを適切に組み合わせ基本的には事業者の自主性を尊重するとし、法令による規制は「事業者の自主的な努力による対応が期待できないものに限定して対応していくべき」と記され、この方針に沿った法案となっています。
第三章「人口知能基本計画」と第四章「人口知能戦略本部」については、「中間とりまとめ」において「法定化すべき」と記されていました。具体的には、政府の司令塔機能を強化すべきであると提言したほか、AIはデュアルユース技術の側面も持つことから広く関係府省庁が参加する政策推進体制とする必要があると記しています。また、総合的な施策の推進にあたっては、司令塔が基本計画(戦略)を策定する必要があるとしました。AI法案が成立すれば、同法を根拠として政府の司令塔組織「人口知能戦略本部(AI戦略本部)」を創設し、「人口知能基本計画」(AI基本計画)を策定します。
このほかAI法案には、AIの活用によって国民の権利や利益が侵害された場合は国が調査し、事業者などへ指導・助言ができるといったもの(第十六条)や、事業者は国や地方公共団体の施策に協力する責務があるといった内容(第七条)が明記されています。