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用語集

コーポレート・ガバナンス

2015年07月01日

コーポレート・ガバナンスとは「企業統治」とも呼ばれ、企業の経営者を律するための仕組みを指します。だれが、何のために、どのように「企業統治」を行うかという考え方は、国によって大きく異なります。一般的に、次の二つの型があります。
 

1)株主中心型(主にアメリカ)
企業は株主のものであるという考え方です。したがって、コーポレート・ガバナンスの主体を株主として捉えます。このことからコーポレート・ガバナンスとは、企業活動の結果を株主の利益と合致させるための方法、または制度を示します。

2) ステークホルダー(利害関係者)中心型(主に日本)
?企業は株主のみならず、その企業をとりまくステークホルダー全員のものであるという考え方です。なお、ステークホルダーとしては、たとえば株主、投資家、債権者、従業員、消費者などが挙げられます。したがって、コーポレート・ガバナンスの主体を、株主だけでなくステークホルダー全体として捉えます。すなわち、コーポレート・ガバナンスとは、ステークホルダーが経営者の意思決定を不適切なものであると判断した場合に、経営者の意思決定を制約しあるいは変更させる手段、またはそのような状況を予防するための手段を示します。

コーポレート・ガバナンスの世界標準とは

経済協力開発機構 (OECD) は、国際的コーポレート・ガバナンス問題に取組み、世界共通で使用できる、「OECD コーポレート・ガバナンス原則」を1999年5月閣僚理事会で発行しました。望ましいコーポレート・ガバナンスのモデルは唯一ではないことを前提に、株主中心主義とステークホルダー中心主義に共通する株主の利益を意識しつつ、どちらかの主義に肩入れすることのない中立的な内容の“五つの大原則”、そしてそれを具体化する勧告を示しました。

2004年には、社会状況の変化を受けて、六つの大原則に内容を強化した「コーポレート・ガバナンス原則改訂版」をOECDが発行しています。以下にその大原則を示します。

新OECDコーポレート・ガバナンス原則

Ⅰ.効率的なコーポレート・ガバナンスの枠組みの基礎の確保に向けて
Ⅱ.株主の権利と所有に係る主要な役割
Ⅲ.株主に対する平等な取扱い
Ⅳ.コーポレート・ガバナンスにおけるステークホルダーの役割
Ⅴ.情報開示と透明性
Ⅵ.取締役会の責務

日本におけるコーポレート・ガバナンスに係る法制度化

日本においては、企業のグローバル化を進めなければならなかったこと、バブル崩壊に関連した不動産会社や住宅専門金融会社の経営破綻、金融機関における不良債権問題、金融機関や証券会社における利益供与に関わる不祥事など企業の不適切な経営に対処するため、下記のような法制度が行われ情報開示等の監視力や株主の権限が強化されてきました。
年月 法制度・原則 対象 求められる対応
2003年3月 証券取引法(2006年金融商品取引法(JSOX法)に改定) 金融商品取引法に定められた有価証券報告書提出義務者 有価証券報告書へのコーポレート・ガバナンス状況の記載
2003年3月 東証:決算短信におけるコーポレート・ガバナンスの適時開示義務 上場企業 決算短信への コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及びその施策の実施状況の記載
2004年3月 東証:上場会社コーポレート・ガバナンス原則 上場企業 コーポレート・ガバナンス原則の実践
2006年3月 東証:コーポレート・ガバナンス報告制度 上場企業 コーポレート・ガバナンスに関する報告書の開示
2015年6月(施行) 東証:コーポレートガバナンス・コード 上場企業 コーポレートガバナンス・コード原則の適切な実践
注)東証:東京証券取引所

上表に示した法制度・原則のそれぞれについて、より具体的には以下のとおりです。
2003年3月証券取引法(2006年に、金融商品取引法(JSOX法)に改定)
有価証券報告書等の「提出会社の情報」において、「コーポレート・ガバナンスの状況」の項目を新設し、以下の事項を記載することが求められるようになりました。(金融商品取引法 第24条参照)。
  1. 会社の機関の内容
  2. 内部統制システムの整備の状況
  3. リスク管理体制の整備の状況
  4. 役員報酬の内容(社内取締役と社外取締役に区分した内容)
  5. 監査報酬の内容(監査契約に基づく監査証明に係る報酬とそれ以外の報酬に区分した内容)
2003年3月東京証券取引所の決算短信におけるコーポレート・ガバナンスの適時開示義務
東京証券取引所は2003年3月1日以降に終了する事業年度に係る決算短信から 「コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及びその施策の実施状況」の記載を義務づけました。具体的な記載すべき項目は次の通りです。
  1. コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方
  2. コーポレート・ガバナンスに関する施策の実施状況
2004年3月東京証券取引所の「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」発行
OECDコーポレート・ガバナンス原則の構成に準拠し、コーポレート・ガバナンスの原則に関する市場関係者の共通認識の基盤を提供するために発行されました。項目を以下に示します。
  1. 株主の権利
  2. 株主の平等性
  3. コーポレート・ガバナンスにおけるステークホルダーとの関係
  4. 情報開示と透明性
  5. 取締役会・監査役(会)等の役割
2006年3月東京証券取引所のコーポレート・ガバナンス報告制度
各企業の取組み状況をより投資家に分かりやすい形で提供するため、コーポレート・ガバナンスに関する情報を決算短信から切り離し、詳細な情報開示を義務付ける「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」が導入されました。本報告書の体系(大項目)を以下に示します。
  1. コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成、企業属性その他の基本情報
  2. 経営上の意思決定、執行及び監督に係る経営管理組織その他のコーポレート・ガバナンス体制の状況
  3. 株主その他の利害関係者に関する施策の実施状況
  4. 内部統制システムに関する基本的な考え方及びその整備状況
  5. その他必要と認める事項
2015年6月東京証券取引所の「コーポレートガバナンス・コード」施行
金融庁と東京証券取引所を共同事務局とする有識者会議が「コーポレートガバナンス・コード原案」を取りまとめ、それを受けて、東京証券取引所が有価証券上場規程の別添として「コーポレートガバナンス・コード」を定め、2015年6月1日から施行しています。本コードは実効的なコーポレート・ガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものです。
*上記に示す東京証券取引所発行の規則・原則・コード等は下記のホームページから入手可能です。http://www.jpx.co.jp/

参考:その他の関連する法規制

「会社法」の施行
法務省により2005 年7 月に改正され、2006年5 月に施行された会社法です。この中では、企業を連結ベースで認識した上で、コンプライアンス体制、リスク・マネジメント体制、専門経営者の業務の適正かつ効率的執行体制の確立を図り、それを監視する実効的体制を取締役会で決議し、その内容を事業報告に開示することを企業に義務付けました。

「金融商品取引法」(JSOX)の成立
2006年6 月に成立した同法では、上場会社等は、事業年度ごとに企業の財務報告の適正性を確保するために必要な体制(内部統制)について評価した報告書(内部統制報告書)を有価証券報告書と併せて提出しなければならないこと、また、内部統制報告書には、公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならないことを定めています。尚、内部統制については次項を参照のこと。
 

コーポレート・ガバナンスと類似する言葉(内部統制、リスクマネジメント)について

コーポレート・ガバナンスを理解するうえでの障害は、前記のような定義の曖昧さだけでなく、類似概念、例えば「内部統制」や「リスクマネジメント」といったものとの相違を理解しなければならない点にあります。細かな内容は時々刻々変化していますが大枠は変化していませんので、以下に各概念の適用範囲等を説明します。

《コーポレート・ガバナンス》
コーポレート・ガバナンスとは「企業経営を規律するための仕組み」と定義されています。冒頭で述べましたように、「経営者を規律する仕組み」のことです。

《内部統制》
内部統制とは、「企業経営者の経営戦略や事業目標等を組織として機能させ達成するための仕組み」と定義されています。言わば、「経営者が組織を規律する仕組み」が内部統制であると言うことができます。

《リスクマネジメント》
リスクマネジメントとは、事業の目的・目標を達成するために、必要最小限の工数で、事故の未然防止はもちろんのこと、事故が発生したときの被害拡大の防止・被害の迅速な鎮火...さらには、リスクをとることを検討すべきチャンス(機会損失)を特定し、対応すること...ができるようになるための一連の活動のことです。内部統制を有効に機能させるための一つの手段である、ともいうことができます。

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図 1 コーポレート・ガバナンス、内部統制、リスクマネジメントの関係

出展:事業会社のためのリスク管理・ERMの実務ガイド

まとめ

各企業においてはコーポレート・ガバナンス改善に関する取組が続けられているはずですが、直近では、2011年にオリンパス株式会社が巨額の損失を「飛ばし」という手法で10以上にわたり隠蔽し、後に粉飾決算により解消していたことが明るみに出ました。本事件により、取締役(特に社外取締役))の独立性と業務能力の両立問題が提起されることとなりました。その他にも多くの企業不祥事が発生しており、それらにより日本企業におけるコーポレート・ガバナンスの欠如が取り沙汰される一方、このような状況を改善すべく、官民協力体制のもとコーポレートガバナンス・コード施行等の新しい取り組みが始まっています。
参考文献
  • OECD コーポレート・ガバナンス原則(OECD Principles of Corporate Governance):2004年 経済協力開発機構(OECD)
  • 有価証券上場規程:東京証券取引所
  • 上場会社コーポレート・ガバナンス原則:2004年 東京証券取引所
  • コーポレートガバナンス・コード:2015年5月 東京証券取引所
  • 英国の先進的ERM 事例と日本への適用:セキュラック・ジャパン株式会社 阪田 麻紀
  • コーポレート・ガバナンス改革の最新の動向― 理念と規範 ―:岡本 久吉
  • 事業会社のためのリスク管理・ERMの実務ガイド:東京ガス株式会社 吉野太郎

(文責:小林 利彦

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