金融庁はこのほど、「健全な企業文化の醸成及びコンダクト・リスク管理態勢に関する対話結果レポート」を公開しました。
不祥事を防ぎ、リスクを管理するためには制度の強化だけでなく、企業文化にアプローチすることも大切です。さらに、金融機関に対する社会や利用者からの期待が変化する中で、コンダクト・リスクを適切に管理する必要性も高まっています。
そこで、金融庁は金融機関との対話を通して、健全な企業文化を醸成するための取り組みや、コンダクト・リスク管理に関する取り組みについて把握しました。本レポートでは、対話結果をふまえた基本的な考え方や方向性がまとまっています。
まず、本レポートによると、対話先の各金融機関が信頼の獲得や倫理観の向上、顧客本位の徹底などのために実施している取り組みについて、5つのプロセスに分類できます(①目指す企業文化に即した企業理念の言語化②企業理念の発信と役職員による認知③企業理念に則した判断・行動を実践するための環境整備④企業理念の浸透度の評価⑤課題改善に向けた取組み)。
特に、各金融機関は「③企業理念に則した判断・行動を実践するための環境整備」を最も重視していることがわかりました。本レポートでは、環境を整備する上での具体的なポイントを複数示しています。(縦・横の両方で良好なコミュニケーションを構築する▽企業理念に基づいた判断・行動を促すような人事評価制度や社内表彰制度を導入する▽役職員が能動的に企業文化改革活動、企業理念浸透・実践活動に参加できる機会を設ける▽業務削減などによって役職員が企業理念の実践に取り組むためのリソースを確保する)。
次に、コンダクト・リスクの管理について解説しています。今回の対話は、コンダクト・リスクを「社会規範にもとる行為、商慣習や市場慣行に反する行為、利用者の視点の欠如した行為等によって企業価値を毀損するリスク」と定義して実施されました。対話の結果、各金融機関は3つのプロセスでコンダクト・リスクを管理していることが分かりました(①管理フレームワーク②モニタリング③ミスコンダクトを誘引しない仕組み)。管理フレームワークについて、対話先の金融機関は、第1線の事業部門による自己統制、第2線の管理部門による支援・牽制、第3線の内部監査部門による保証・助言によって、全社的にリスクを管理していました。
内部監査に関する金融機関の取り組みもまとまっています。対話先の金融機関は、内部監査の高度化に向けた課題の一つに「企業文化に対する監査」を掲げ、コソーシングを活用しながら監査に取り組んでいることが分かりました。企業文化を評価する難しさとして、「定量的なアプローチを用いることは困難」「強みと思われた企業文化が特定の状況において不正の遠因にもなる」といった意見も挙がりました。
本レポートでは、対話先の金融機関における具体的な取り組み事例もまとまっています。レポート全文は金融庁のホームページに掲載されています。