金融庁は3月24日、「記述情報の開示の好事例集2024」の最終版を公表しました。
「記述情報の開示の好事例集」とは、企業の記述情報開示の促進・底上げを目的として、金融庁が2018年から毎年発表している資料です。内容は、投資家・アナリスト・有識者などが参加する「記述情報の開示の好事例に関する勉強会」での議論をもとに、都度更新されています。
「記述情報の開示の好事例集2024」の最終版は、「重要な契約等、経営方針等、MD&A」をテーマとした第5回勉強会と、「中堅中小上場企業の開示例」をテーマとした第6回勉強会での議論内容をふまえて取りまとめられました。具体的には、前回発表された第4弾から下記のような点が更新されています。
1つ目の更新ポイントとして、「投資家・アナリスト・有識者が期待する開示を充実化させるための取組み」の内容が追加されました。開示を充実化させるためには関係部門間の連携強化が重要であることや、開示書類や開示タイミングが異なっていても、開示書類間の情報一貫性が重要であることなどが加わっています。
2つ目の変更点としては、「経営上の重要な契約等」について、投資家・アナリスト・有識者が積極的な開示を期待していることがまとまっています。事前承諾の合意だけでなく、事前協議や報告も開示することが有用である点なども記載されています。その上で、重要な契約の開示を行っている会社の好事例が掲載されています。
3つ目に、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に関する好事例も追加されました。投資家・アナリスト・有識者が期待するポイントとして、経営方針や経営環境に関する認識などを具体的かつ相対比較の観点をもって開示することや、経営環境の認識を開示する際にはマクロ環境だけでなく、自社に密接に結びつくセミマクロやミクロ環境も含めることなどが挙げられています。
4つ目に、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」に関する好事例が追加されました。投資家・アナリスト・有識者は、経営判断に用いる独自指標、財務数値の分析結果、中長期経営計画等で掲げた方針、課題解決に向けた施策の毎年の進捗状況、課題解決等の時間軸など、具体的な開示を期待しています。
そして、「中堅中小上場企業の開示例」の項目も追加され、企業における取り組み例が掲載されています(中堅中小上場企業の参考となるよう、直近決算期における売上高が300億円以下の企業の事例を選定)。投資家・アナリスト・有識者が期待する点として、すべてを網羅的に開示するのではなく、経営上の重要な課題を特定した上で具体的に記載することが有用であるという点や、事業環境の前提や特徴、長期のロードマップなどを具体的に記載することが有用である点などが記載されています。