金融庁は2月3日、「記述情報の開示の好事例集2024(第4弾)」を公表しました。
「記述情報の開示の好事例集」とは、企業の記述情報開示の促進・底上げを目的に、金融庁が2018年から毎年発表している資料です。好事例集の内容は、投資家・アナリスト・有識者などが参加する「記述情報の開示の好事例に関する勉強会」(以下、勉強会)での議論内容をふまえ、都度更新されています。
今回発表された「記述情報の開示の好事例集2024(4弾)」では、第4回勉強会での議論内容をもとに、次の3点が更新されています。
1つ目の更新ポイントとして、「投資家・アナリスト・有識者が期待する開示を充実化させるための取組み」の中にコラムが追加されました。このコラムでは、有価証券報告書を株主総会前に公開することを投資家・アナリスト・有識者が求めている点をふまえ、実際に早期開示を行っている会社の実例を2つ紹介しています。早期開示を行っている経緯・背景や、工夫している点などについてまとまっています。
2つ目の更新ポイントとして、コーポレート・ガバナンスに関する好事例集が追加されました。具体的には、「コーポレート・ガバナンスの概要」「監査の状況」「株式会社の保有状況」の3項目に分けて、それぞれの情報開示において投資家・アナリスト・有識者が期待するポイントと、好事例として取り上げられた会社における開示例がまとまっています。
「コーポレート・ガバナンスの概要」について、投資家・アナリスト・有識者は、「取締役会や経営会議におけるアジェンダ設定や、設定したアジェンダに対する議論、意思決定が適切に行われているか」に注目しています。また、「取締役会及び委員会の具体的な検討内容の開示において、特に重要な事項の記載を充実すること」や「取締役会の実効性評価において識別した課題と対策を時系列で示し、継続的に取り組む課題や新たな課題を示す」ことなどを有用としています。
「監査の状況」については、「重点監査項目に対する監査結果や監査役会等の認識を記載すること」「監査役監査や内部監査体制の強化のために行っている取組みや、監査人の評価について具体的に開示すること」「会計上の主要な論点が何か、KAMについての監査役等の検討内容等について具体的に開示すること」などが期待されています(KAMとは監査上の主要な検討事項のこと)。
「株式会社の保有状況」については、「政策保有株式が縮減傾向にあるのか、減らしていく方針を持っているのか」という点が着目されています。また、「政策保有株式の売却により得た資金の使途を具体的に示すこと」や「投資株式の区分の基準や考え方について、特に保有目的が純投資目的である投資株式においては、独自の区分けによる解像度を高めた記載をすること」などが求められています。
そして、3つ目の更新ポイントとして、参考資料の定量分析結果に「有価証券報告書の株主総会前開示の状況」が追加されています。これは、2023年4月期から2024年3月期決算企業における有価証券報告書の開示時期などについて調査・集計したものです。その結果、株主総会前に有価証券報告書を開示している上場企業は57社(上場企業の1.5%)にとどまっていることが分かりました。また、これら57社のうち、1週間以上前に開示を実施している企業は18社のみであったことが記されています。