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人的資本や多様性、人権に関する事例を追加、「記述情報の開示の好事例集2024(第3弾)」 金融庁

掲載:2025年01月24日

リスクマネジメント速報

         
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金融庁は2024年12月、「記述情報の開示の好事例集2024(第3弾)」を公表しました。

「記述情報の開示の好事例集」とは、企業の記述情報開示の促進・底上げを目的として、金融庁が2018年から毎年発表している資料です。好事例集の内容は、投資家・アナリスト・有識者などが参加する「記述情報の開示の好事例に関する勉強会」(以下、勉強会)での議論内容をふまえ、都度更新されています。

今回は、人的資本や多様性、人権をテーマに第3回の勉強会を実施。その内容をもとに発表された「記述情報の開示の好事例集2024(第3弾)」では、第2弾の内容に次のような点が追記されました。

まず、「有価証券報告書のサステナビリティに関する考え方及び取組の全般的な開示のポイント」において、新たに2点が加わりました。1つ目は「サステナビリティ情報は、グローバルでは法定開示書類に記載されているため、日本だけ任意開示書類で記載があれば良いということにはならず、投資家は、重要な情報は有価証券報告書に記載することを期待している」という事項です。2つ目は、「非財務情報は、将来の財務に示唆があるものとして財務情報の代わりに求められているため、非財務情報と財務情報の開示のタイミングが同じであることが重要」という事項です。

また、人的資本や多様性に関する開示例が追加されました。この分野に関して、投資家・アナリスト・有識者などが期待することとして記されているのは7つです(▽人材戦略がどのように企業価値向上につながるかを開示する▽人的資本に関する非財務情報と財務情報を連動させる▽人的資本に関する財務データを開示する▽人的資本に関する戦略と指標及び目標を連動させる▽現状と目標とのギャップを把握し、そのギャップを埋めるための取り組みの進捗を開示する▽管理職を増やすための施策やKPI 、進捗状況などを開示する▽女性管理職比率などの多様性に関して、連結ベースで開示する)。その上で、それぞれの事項を満たす上で参考になる企業の例が紹介されています。

さらに、人権に関する開示例も追加されました。人権について、投資家・アナリスト・有識者は3つのポイントを期待しています(▽人権に関する取り組みがどのように企業価値の向上につながるのか、なぜ重要と考えているかを記載する▽人権デュー・ディリジェンスなどに関する課題をどのように解決するのか、問題を未然に防ぐためにどのような取り組みをするのかを開示する▽サプライチェーンの人権に関して現地を訪ねてセルフチェックを行っている場合は、訪問先の選定基準などについて開示する)。これらのポイントを意識する上で参考となる企業の好事例が取り上げられています。

参考資料として公開されている定量分析結果では、「従業員の状況」における多様性に関する各指標を連結ベースで開示している企業の割合が新たに報告されています。これは、2024年3月決算の上場企業を対象に調査したものです。集計の結果、 「管理職に占める女性労働者の割合」「男性労働者の育児休業取得率」「労働者の男女の賃金の差異」の全ての項目において、連結ベースで開示している企業は約6~8%でした。

今後、「記述情報の開示の好事例集」は、第4回の勉強会内容をふまえ、コーポレート・ガバナンスの概要などに関する情報も追記・更新される予定です。