経済産業省は4月7日、「企業の競争力強化のためのダイバーシティ経営(ダイバーシティレポート)」を公表しました。
このレポートは「多様性を競争力につなげる企業経営研究会」における議論をふまえ、イノベーション創出を目指す企業や国際競争力を高めたい企業に向けて発表されたものです。
「ダイバーシティ経営」とは「多様な人材をいかし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげる経営」のことです。
グローバルな経営環境や労働市場の供給構造が大きく変化している昨今、同質性が高い組織は変化への柔軟な対応力に乏しく、中長期的な競争環境下を勝ち抜くにはリスクが大きいほか、チャンスを狭める可能性もあります。そこで、経営戦略実現の大きな推進力となるのがダイバーシティ経営です。
一方で企業は、ダイバーシティ経営に取り組む上で「グループ・事業部門で一律的な取り組みを行うのみでは効果が得られない」「取り組みの優先順位付けが困難」「ダイバーシティ経営の考え方自体が理解されにくいケースがある」などの課題を抱えている現状もあります。
レポートでは、それらの課題を払しょくするための手順として7つのステップを紹介しています(⓪アクション推進基盤の整備①ダイバーシティ経営の取組方針策定②推進体制の構築③事業・地域特性等を加味した環境・ルールの整備④管理職の行動・意識改革⑤従業員の行動・意識改革⑥労働市場・資本市場への情報開示と対話)。
⓪では、取締役会と経営陣の双方が知・経験のダイバーシティを確保し、多様性をいかす強い信念を持つ必要があります。①ではDiversity、Equityの必要性と考え方、Inclusionの在り方を検討した上で方針やポリシーを明確にし、組織への浸透を図ります。また、KPI・ロードマップを策定し、データ利活用を通じて進捗状況の追跡と管理を行うことで、取り組みの精度を高め続けることになります。
②では、トップダウン体制を構築するのとともに、従業員がダイバーシティ経営の取り組みに関わり、取締役会と経営陣に声を届けるボトムアップ体制の構築も必要になります。⑥では、労働市場・資本市場それぞれへの情報発信が必要です。労働市場に対しては、経営戦略実現に必要な人材を確保するために一貫した人材戦略を策定・実行し、その内容・モニタリング結果・成果を発信することになります。資本市場に対しては、投資家に対して企業価値向上につながるダイバーシティ経営の方針・取り組みを発信することになります。
上記のようなそれぞれのアクションにおけるポイントだけでなく、実際にアクションを実行した企業の事例も紹介しています。また、参考資料として、日本のダイバーシティ経営に関する変遷や、日本における多様性に関する情報開示状況なども掲載されています。