現在の経営課題は「人材の強化」と「収益性向上」が突出、報告書「日本企業の経営課題2024」(第45回 当面する企業経営課題に関する調査)を公表 JMA
日本能率協会(JMA)はこのほど、報告書「日本企業の経営課題2024」を公表しました。報告書は2024年度の「当面する企業経営課題に関する調査」の結果を取りまとめたもの。同調査は1979年から毎年実施され、2024年度で第45回となりました。調査対象はJMAの法人会員ならびにサンプル抽出した全国主要企業の経営者となり、470社から回答を得ました(回答率9.3%)。
「当面する企業経営課題に関する調査」では毎年、「人材の強化」や「収益性向上」、「売り上げ・シェア拡大」など計20個の経営課題を提示し、「現在」「3年後」「5年後」の観点で重要度の高い課題を選択してもらう手法を採用しています。2024年度の報告書によると「現在」の経営課題として最も多く挙げられたのは「人材の強化」(47.4%)、ついで「収益性向上」(47.0%)となり他の課題を大きく上回りました。「人材の強化」は2年連続で1位となり、生産年齢人口の減少や人材の流動容易性による人材獲得競争の激化が背景にあると指摘しています。「収益性向上」は3年連続で増加傾向となりました。原材料費やエネルギー価格の高騰、人件費上昇などといったことが影響しており、利益確保が喫緊の課題となっていると分析しました。
「人材の強化」は「3年後」の経営課題でも1位(48.3%)となりました。他方、「デジタル技術・AIの活用・戦略的投資」は「現在」では11位でしたが「3年後」では7位へと浮上し、AI活用において本格利用の機運が向上していると読み解いています。
報告書ではこのほか、「組織・人事領域」や「営業・マーケティング領域」など5つの経営機能別に「現在重要度が高い課題」を尋ねた結果がまとめられています。
それによると、例えば「組織・人事領域」で重視する課題として最も多く挙げられたのは「次世代経営層の発掘・育成」(30.0%)、次いで「優秀人材の獲得」(28.3%)、「管理職層(ミドル)のマネジメント能力向上」(27.0%)となりました。今回調査で6位となった「若手社員・優秀社員のリテンション(定着、離職防止)」は、昨年と比べポイントが2倍近く増加し、9位から上昇しました。
ただ、従業員規模別でみると、上位3つはそれぞれ異なりました。例えば1位について大企業では「組織風土(カルチャー)改革、意識改革」でしたが、中堅企業では「経営戦略と連動した人材戦略の策定と実行」、中小企業では「優秀人材の獲得」となりました。
「人材の強化」を課題と捉える企業が多いなか、「人的資本経営」が提唱され、人材をコストではなく資本と捉えその価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営が求められています。上場企業などでは、サステナビリティ関連項目として人的資本の情報開示も義務付けられるようになりました。報告書のコラムでは、人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素という「人的資本経営」フレームワーク(「人材版伊藤レポート」)の観点からみた調査結果も併せて紹介しています。