統合的アプローチを推奨、「環境課題の統合的取組と情報開示に係る手引き」を公表 環境省
環境省はこのほど、「環境課題の統合的取組と情報開示に係る手引き」を公表しました。気候変動を扱うTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)と、自然資本を扱うTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)、それぞれの取り組みおよび情報開示を統合して進める「統合的アプローチ」を推奨しています。読者として想定されているのは主に経営層やサステナビリティ関連部門、事業部門であり、手引きには実際に企業が行っている開示事例も紹介されています。
公開された手引きは理論編と実践編に整理されています。理論編では、複数の課題を関連づけて取り組むことが、戦略策定やステークホルダー対応をより効果的にすると説明しています。戦略策定では、複数の環境課題を一体として捉えることで、相互関係性を考慮した網羅的な分析や戦略的な意思決定・リスク管理が期待できるとしました。また、共通するプロセスを統一したり、課題間の関係性を考慮した対応および開示をしたりすることで、ステークホルダーエンゲージメントも可能になるとしました。CDPのフレームワークも環境課題の相互関係性に着目した内容になっていると紹介しています。
実践編では、TCFDとTNFDは対象となる課題は異なるものの、4つの柱(ガバナンス▽戦略▽リスク管理▽指標と目標)に沿って規定される開示項目はおおむね共通しているため、両者を同時に対応することが効率的な取り組みにつながると示しました。気候変動と自然資本には相互関係性があること、この前提を踏まえた取り組みと情報開示が重要だと記しました。
4つの柱に沿った統合的取り組みの手法例とメリットも掲載されています。手法例としては例えば、リスク管理では「気候・自然共通のリスク管理プロセスの構築」を挙げています。気候変動と自然資本に関するリスクを同じ体制・プロセスで管理し、それらを全社的リスク管理に統合します。他の経営リスクとの比較が容易になるほか、一元化された会議体やレポートラインによって環境リスクを考慮した上で自社へのリスク・機会を統合的かつ優先順位をつけて分析できることが利点だと説明しています。
企業の取り組み事例としては例えば、アサヒグループホールディングスがTCFDとTNFDでシナリオを共通化していることや、積水化学工業が資源問題も考慮に入れたシナリオ設定をしていることなどを紹介しています。
フランスを中心に周辺国で対応が進んでいるとされる「環境デュー・ディリジェンス(環境DD)」についても取り上げています。環境DDで収集した情報を活用できれば、環境課題に対する質の高い取り組みや開示につながるとし、特にリスク特定において有用性があるなどと指摘しました。