環境省はこのほど、グリーンファイナンスに関する検討会の内容を取りまとめた「グリーンファイナンス市場の中長期的な発展に向けて」を公表しました。検討会は、グリーンファイナンス市場の拡大と質の向上を目的に開催されており、市場の調査・分析、更なる発展に向けた課題やその対応について議論を行う場となっています。
グリーンファイナンスの市場規模は、2024年までに約5兆円に達するなど環境省が市場の拡大を推進してきたものの、国際的な情勢や市場環境の変化などで一巡感があるとの指摘を受け、公表された文書では改めてグリーンファイナンスの機能や意義、メリットなどを確認し、市場参加者への期待を整理しています。
グリーンファイナンスの推進は、第六次環境基本計画が目指す「経済社会システムの大変革」の具体化に向けた取り組みの一つで、グリーンファイナンスを国民の福祉の向上や経済社会の基盤強化に貢献する環境改善の実現をもたらす金融システムや金融行動全般と位置づけています。
具体的には、日本が2050年にネット・ゼロ(炭素中立)を実現するためには今後10年間で150兆円の投資が必要と試算されており、環境分野における民間資金活用の重要性を訴えました。投資対象の資産種類や分類は、債券・投融資・上場株式・プライベートエクイティなど多様で、引き続き、資金提供者と資金調達者において最も適切な手法を選択できるよう、環境整備に努めていくと強調しました。
グリーンファイナンスの意義については、経済性を担保しながら事業者の脱炭素化や資源循環、自然再興への取り組みを資金的に支援し、国民のウェルビーイングの向上に寄与できる可能性があると明記しました。メリットとしては、資金調達者においては、「異常気象などの被害減少や自然資本が守られることで経営環境が安定し、競争力の向上につながる」、金融機関・機関投資家にとっては「投資先・顧客企業の安定や経済基盤強化への貢献を通して収益の安定やリスク管理の強化につながる」という見解を示しました。
このほか、市場参加者に期待する取り組み事項や、環境省の今後の取り組みの方向性について、市場の質の向上やローン活用を促すための施策、市場の裾野の拡大に向けて取り組むことなどが記されています。