文部科学省と気象庁はこのほど、日本の気候変動について最新の観測結果や科学的知見を盛り込んだ「日本の気候変動2025」を公表しました。同書は、環境省が気候変動適応法に基づき作成する「気候変動影響評価報告書」の科学的基礎資料として活用されます。気候変動影響評価報告書はおおむね5年ごとに作成すると定められており、初めて作成された2020年12月から近く5年を迎えることから、次の報告書が作成されるタイミングに合わせて「日本の気候変動2025」は取りまとめられました。
日本の気候変動2025は「本編」と「詳細編」の2種類の報告書のほか、「概要版」と「都道府県別リーフレット」、概要版資料を使って報告書の内容を解説した動画も作成されました。本編では、気候変動の概観、温室効果ガスの大気中濃度、気温や降水などの要素ごとの解説を収録しています。観測事実と将来予測をまとめ、将来の気候は、2度上昇(パリ協定の2度目標が達成された世界)と4度上昇シナリオ(追加的な緩和策を取らなかった世界)に基づき予測しています。なお、気候変動とは、自然変動や地球温暖化が原因となって、気温や降水量などの気候の諸要素にもたらされる様々な変化のこと。他方、地球温暖化とは、人為起源の温室効果ガスの排出などによって地球の平均気温が上昇することを指します。
気温については、日本では100年当たり1.4度の割合で年平均気温が上昇したと記されています(上昇率1.4度)。海水温についても日本近海では上昇率が1.33度だったとし、この値は世界平均の2倍以上と紹介されています。日本近海は温まりやすい陸地と、暖流である黒潮の影響を受けやすく、上昇率が高くなると考えられています。
他方、将来予測(21世紀末)については、国内の年平均気温が20世紀末と比べ約1.4度上昇(2度上昇シナリオ)、4度上昇シナリオでは約4.5度上昇すると予測しています。日本近海の平均海面水温については2度上昇シナリオでは約1.13度の上昇、4度上昇シナリオでは約3.45度上昇するとしました。
前回(2020年公表資料)には記載がなかった内容として例えば、極端現象の将来予測に関する情報があります。100年当たり1回程度の頻度で生じるような発生頻度が低い極端現象が、地球温暖化の進行に伴いどのように変化するかを記しています。
具体的には、工業化以前に100年に1回現れていた高温は、2度上昇シナリオで約67回に、4度上昇シナリオではほぼ毎年発生するような頻度(約99回)になると予測しています。大雨についても100年に1回の極端な降水の頻度が、2度上昇シナリオで約2.8回に、4度上昇シナリオでは約5.3回に増えると予測しました。