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カーボンニュートラル

掲載:2022年11月11日

改訂:2022年11月22日

用語集

「カーボンニュートラル」とは、温室効果ガス排出量の全てをほかの場所での排出削減・吸収量で埋め合わせし、全体としての排出量をゼロにすることをいいます。類似した言葉として「カーボンオフセット」がありますが、こちらは温室効果ガス排出量についてできる限り削減する努力をしたうえで、各組織が決めた任意の量を埋め合わせることを指します。カーボンニュートラルは、カーボンオフセットをさらに前進させた取り組みといえるでしょう。

地球温暖化が世界的に問題視されるようになったのは、1970年代のことです。気候変動についての研究の進歩に伴い温暖化への危機感が広がり、1988年には世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)が「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」を設立。1992年には大気中の温室効果ガス濃度の安定化を目的とした「気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)」が採択され、1995年には「気候変動枠組条約第1回締約国会議(COP1)」が開催されました。

1997年のCOP3では日本が議長を務め、「京都議定書」を採択。先進国の温室効果ガス排出量について法的拘束力のある数値約束を設定することなどに合意しました。2015年のCOP21で採択された「パリ協定」は「京都議定書」の内容をさらに推し進め、途上国を含む全ての参加国・地域に排出削減の努力を求めるものです。長期目標として、 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃より十分低く保ち1.5℃に抑える努力をすること(2℃目標)、そのために21世紀後半には温室効果ガスの人為的な排出量と除去量を均衡させることが掲げられました。「2℃目標」については、2021年のCOP26の合意文書で「1.5℃目標」を目指すよう表現が見直されています。

日本政府は、2016年4月の署名式にてパリ協定に署名を行い、同年5月に「地球温暖化対策計画」を策定。2020年10月には、菅内閣総理大臣(当時)が2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言しました。これを受けて策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、エネルギー関連産業、輸送・製造関連産業、家庭・オフィス関連産業に14の重要分野を設定し、実行計画を示しています。

また、2021年6月には国・地方脱炭素実現会議による「地域脱炭素ロードマップ~地方からはじまる、次の時代への移行戦略~」も公表され、2030年度までに100か所以上の「脱炭素先行地域」を作ることや、重点対策の実施を全国に伝搬する「脱炭素ドミノ」により2050年を待たず脱炭素を達成することなどが目標とされました。

さらに、2021年10月には、「地球温暖化対策計画」を5年ぶりに改定。「2050年カーボンニュートラル宣言」や、「2030年度46%削減目標」(2030年度には温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%に向け挑戦するという中期目標)の実現に向けた対策が示されました。2022年2月には経済産業省が「GXリーグ基本構想」を公表し、GX(グリーントランスフォーメーション)に取り組む「企業群」が官・学とともに経済社会システム全体の変革のための議論や新たな市場創造を行う場として「GXリーグ」の準備を進めています。

地球温暖化への取り組みが世界的に加速する中、2022年開催のCOP27では、新興国に対する温暖化への適応支援強化や「損失と損害」への資金支援などが焦点となりました。交渉では特に脆弱な国を支援対象とした基金の設立に合意が成立するといった大きな前進がみられたものの、全ての化石燃料の段階的削減などについては合意に至らず、温室効果ガスの排出削減に向けて引き続き多くの課題が残されています。

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