気象庁は1996年度から年次で公表している報告書「気候変動監視レポート」を、2024年度から利便性を向上する目的でウェブサイトに移行し、このほど公開しました。年次報告書は従来、100ページ以上あるPDF文書でしたが、今回から「気候変動ポータル」(気象庁公式サイト)のコンテンツの一つとして提供されるようになりました。これに伴い、大気中温室効果ガス濃度や気温、降水量などについて常に最新の観測情報をリンク先ページから確認できるようになります。
気候変動監視レポートは気候変動の最新情報を集めたもので、主に観測された変化に着目してまとめられています。日本と世界の大気および海洋などの観測結果を基に、気候や温室効果ガス、気温、降水などの変化について取り上げています。
2024年のトピックとして日本の年平均気温が2年連続で観測史上最高を更新したこと、さらに気温偏差はプラス1.48度となり、統計を開始した1898年以降、最も高い値となったことを紹介しています。気温偏差は、これまでの最高値だった2023年(プラス1.29度)を大きく上回る値となりました。
気象庁気象研究所などがイベント・アトリビューションという、地球温暖化の影響(人間活動の影響)を評価する手法で猛暑日や豪雨を研究、分析した結果もトピックに挙げられています。具体的には、7月以降の顕著な高温、同月下旬の北日本の大雨、9月下旬の石川県能登地方における大雨について地球温暖化の影響で高温が発生したり、降水量が増加したりした可能性があるとしました。
他方、世界の気候変動については、世界各地で異常高温が発生し、各国から月平均気温や季節平均気温の記録更新が伝えられた年だと紹介しています。世界の年平均気温偏差はプラス0.62度となり、1891年の統計開始以降、最も高い値となりました。
異常気象における気象災害も世界で発生しています。中国南部から東南アジアでの台風(7、9~10月)、スペイン東部の大雨(10月)、米国南東部のハリケーン(9月)などがあり、例えば米国南東部のハリケーン「HELENE」では、220人以上が死亡したと記されています。
なお、気象庁公式サイトの配下にある「気候変動ポータル」は、気象庁が公表する気候変動関連の情報を一元的に集約したコンテンツであり、今年3月から運用されています。「気候変動監視レポート」のほか、「日本の気候変動2025」や「気候予測データセット」など専門情報へのアクセスが容易になっています。