
民間の非営利組織であるIFRS財団は傘下に国際会計基準審議会(IASB)をもち、IFRS(国際財務報告基準)を策定しています。IFRSは約150の 国や地域で使用が認められ、日本においても任意適用の拡大促進が図られています。また、IFRS財団は、2021年11月に国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)を設立。国際的なサステナビリティ開示基準の開発を進めています。
IFRS財団の設立の経緯と活動
IFRS財団(IFRS Foundation)は、国際的な財務報告の基準を策定する独立した民間の非営利組織です。IFRS財団の前身であり1973年に設立された国際会計基準委員会(IASC:International Accounting Standards Committee)は2001年に組織変更が行われ、IASC財団(IASC Foundation)とその傘下の国際会計基準審議会(IASB:International Accounting Standards Board)が誕生しました。2010年には、IASC財団はIFRS財団へと名称変更されました。
IASBが策定する国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)は世界的に導入が進み、現在では約150の国や地域で使用されています。なお、前身団体であるIASCが作成していた国際会計基準(IAS:International Accounting Standards)についても一部はいまだ有効であり、IFRSとIASを総称してIFRSsと表記されることもあります。
IFRS(国際財務報告基準)をめぐる日本の動向
日本独自の会計基準が具体的なルールを規定する「細則主義」であるのに対し、IFRSは基本的な原則のみを示す「原則主義」であるなど、両者にはさまざまな違いがあります。日本においては2007年8月に、IASBと企業会計基準委員会(ASBJ:Accounting Standards Board of Japan)が、日本の会計基準をIFRSにコンバージェンス(収れん)させる方針を示した「東京合意」を公表しました。その後、2009年6月に企業会計審議会が公表した「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」では、将来的な強制適用も視野に入れながらIFRS任意適用を開始することが示され、2010年3月期から一定の要件を満たす日本企業のIFRS任意適用が開始されています。
そして、2013年に同審議会が公表した「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」では、IFRSの強制適用の是非等についてはいまだ判断すべき状況にないとされ、まずはIFRS任意適用企業の積上げが重要であるとの方針が示されました。以降、わが国ではIFRS任意適用企業の拡大促進やIFRSに関する国際的な意見発信、日本基準の高品質化、国際的な会計人材の育成の取り組みが進められてきました。2021年4月以降の事業年度からは、IFRSに基づいた「収益認識に関する会計基準」が、一部企業に強制適用されています。
ISSB によるIFRSサステナビリティ開示基準の公表
IFRS財団は2021年11月、市場からの強い要望を受け、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB:International Sustainability Standards Board)の設立を発表しました。ISSBは2023年6月に、初のIFRSサステナビリティ開示基準であるIFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」およびIFRS S2号「気候関連開示」を公表しています。
ISSBの設立を受け、日本においても2022年7月にサステナビリティ基準委員会(SSBJ:Sustainability Standards Board of Japan)が設立され、IFRSサステナビリティ開示基準と整合性のある開示基準の開発が進められています。