日本経済団体連合会(経団連)は3月31日、「2050年カーボンニュートラルに向けたビジョンと2024年度フォローアップ結果 総括編(2023年度実績)[確定版]」を公表しました。
これは、「経団連カーボンニュートラル行動計画(以下、経団連CN行動計画)」に参加する業界団体や企業における2023年度の取り組み実績をまとめた文書です。2024年12月公表の速報版に続き、このたび確定版が発表されました。
経団連CN行動計画は「2050年CNに向けたビジョン(基本方針等)」の策定と、4つの柱(①国内事業活動からの排出削減②主体間連携の強化③国際貢献の推進④2050年CNに向けた革新的技術の開発)で構成されています。今回発表された文書では、それぞれにおける取り組みを整理しています。
まず、2050年CNに向けたビジョン(基本方針等)の策定については、参加全63業種のうち、ビジョン策定済の業種数は昨年度の45業種から47業種に増加し、策定済みの業種は参加業種全体の74.6%となりました。
また、目標・実績などを公開している61業種のうち、目標を達成しつつある6業種を中心に、CNの実現に向けて目標の見直しが表明されており、目標指標の更新や引き上げが行われたことを評価しています。
「①国内事業活動からの排出削減」については、参加全63業種のうち、全部門(産業、エネルギー転換、業務、運輸)の2023年度のCO2排出量は合計値で4億7,258万トンとなり、2013年度比で21.5%減少、前年度比では2.3%減少しました。部門別でも、2013年度比では全部門で減少しました。一方で前年度比では、運輸部門で増加、産業部門、エネルギー転換部門、業務部門で減少となりました。
各部門での排出量の増減の分析も行われています。例えば、エネルギー転換部門において前年度比で排出量が減少した主な要因として、原子力発電所の再稼働及び定期検査完了により原子力発電の発電電力量が増加し、火力発電による発電電力量が減少したことなどが挙がっています。
②については、参加業種がCNに貢献する製品やサービスの開発・提供を通して、社会全体のCO2排出削減に貢献している点、多様な業種によって再生可能エネルギーが提供されるようになっている点を評価しています。また、各業種の取組例や、算定の例が紹介されています。例えば化学業界では、2030年の1年間に製造された製品をライフエンドまで使用した時の太陽光発電材料によるCO2排出削減貢献量を4,545万t-CO2と算定しています。
③については、多くの業種が自らの事業だけでなく、バリューチェーンにおいてもCO2排出量の削減に貢献しているほか、排出量削減につながる技術・ノウハウを海外に移転させるなどして世界の温室効果ガス排出削減へ貢献している状況が報告されています。
④については、参加業種は、CO2の大幅削減につながる革新的技術の開発と実用化を進めていることを報告しています。例えば鉄鋼業界では、製鉄プロセスにおける水素活用の技術開発を進めています。
CN行動計画は、2026年度に本格稼働する排出量取引制度や、事業者にかかる負担などもふまえて、計画のあり方が検討される予定です。