経済産業省は2月18日、2040年に向けて脱炭素社会と産業振興の両立を目指す新たな戦略として、「GX2040ビジョン」を公表しました。
2023年2月に「GX実現に向けた基本方針」が策定されて以降、GX(グリーントランスフォーメーション)に向けた具体的な取り組みが進む一方で、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化の影響、GXによる電化等の電力需要増加の可能性など、将来の見通しに対する不確実性が高まっています。こうした状況を受け、大臣や有識者から成るGX実行会議は議論を重ねました。そして、「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(2023年7月策定)を改訂し、GXに向けた投資の予見可能性を高め、さらに長期的な視点を示す戦略として「GX2040ビジョン」が完成しました。
「GX2040ビジョン」ではまず、目指すGX産業構造のあり方として、GX分野での投資を通じて、革新技術を生かした新たな GX事業が次々と生まれることを目指しています。また、日本の強みであるフルセットのサプライチェーンが、脱炭素エネルギーの利用やDXによって高度化されることも目指しています。その実現を図るにあたって、日本の現状課題としては、イノベーションの担い手や技術があってもスピード感をもって商業化・スケールアップさせることが十分にできていない点などを挙げられています。その上で「カギとなる取組」として、企業の成長投資を後押しする制度改善や、国内外の機関と提携したイノベーションの社会実装などを示しています。
次に、GX産業立地に関する戦略がまとまっています。GX×DXを進め、産業構造を高度化する上ではAI向けのDC(データセンター)が不可欠とした上で、DCには膨大な電力を必要とし、脱炭素電力で賄う必要があるという前提が示されています。そこで、「新たな産業用地の整備」と「脱炭素電源の整備」を進め、今後の地方創生・経済成長につなげる方針を示しています。また、DXに取り組む企業に対して脱炭素電力利用を促すインセンティブや、地方公共団体にとって脱炭素電源を整備するインセンティブの措置を取ることも検討することとなっています。
世界との関わりについては、2050年のCN(カーボンニュートラル)に向けて各国とも協調して取り組む方針を記しています。一方で、諸外国との相対的なエネルギー価格差については、自国産業の維持・発展における課題であると指摘しています。投資促進策を講ずる際には現実的なトランジションを追求し、グローバル状況を冷静に見極める必要もあるとしています。
ビジョンの後半部分では、GXを加速させるための計画について、エネルギーや産業、くらしなどの分野別に記載しています。また、「成長志向型カーボンプライシング構想」に向けた排出量取引制度の本格稼働や、化石燃料賦課金に関する措置についてもまとまっています。排出量取引制度は2026年度から本格稼働し、一定の排出規模以上(直接排出10万トン)の企業は一律、制度の対象になります。化石燃料賦課金は2028年度から導入される方針です。
なお、GX推進に伴って生じる課題(新たな労働需給、地域経済への影響など)に対しては、各省庁が連携しながら適切に対応し、公正な移行を後押しする方針となっています。
今後は「GX2040ビジョン」をもとに、すでに始動しているGXの取り組みを2040年に向けて飛躍させるための政策を具体化することとなっています。