日本経済団体連合会(経団連)は4月15日、提言書「2030年に向けたインフラ・交通政策のあり方」を公表しました。
政府は、今後5年間の社会資本整備重点計画・交通政策基本計画の策定を検討しています。そこで経団連は、経済界の意見を反映させるべく、盛り込むべき施策を整理しました。
本提言は4つの柱で構成されています(①インフラの維持・整備に向けた施策②経済成長に向けたインフラ政策③交通政策④環境と経済の好循環)。
「インフラの維持・整備に向けた施策」の章では、高度経済成長時代に集中的に社会インフラが整備されてから50年が経つことから、老朽化したインフラの現状把握とリスクの洗い出し・評価を速やかに行い、不具合が軽いうちに予防的なメンテナンスを繰り返すことが重要だとしています。
また、人口減少が進む中、「地域インフラ群再生戦略マネジメント」(政府主導のもとで、既存の行政区域に拘らない広域的な視点でインフラ「群」として捉え、効率的・効果的にマネジメントすること)などの推進も提言しています。
さらに、大災害の発生時に早期に復興できるよう、平時からソフト・ハードの両面での施策を取ることが必要だと提言しています。ソフト面の対策例として、データ活用による高精度な避難ルート作成などが挙げられます。ハード面では、木造住宅密集地域の解消などが挙げられます。
「経済成長に向けたインフラ政策」については、国際競争力に打ち勝つことを念頭に置いた「魅力的な都市空間」の整備、コンパクトシティ・スマートシティの推進、空港・道路整備を提言しています。日本と外国の双方の経済成長に向けて、日本の質の高いインフラシステムを海外に輸出することも強化すべきとしています。
「交通政策」については、労働時間規制や物価高騰などの影響で、公共交通事業の維持・確保が一層難しくなっていることを指摘しています。鉄道事業では、2024年に国土交通省が総括原価(鉄道運賃水準の算出の根拠となるもの)の算出方法を見直したものの、本提言書では改善の余地があるとしています。具体的には、総括原価の算出の際、燃料価格や人件費の高騰をタイムリーに勘案できるよう制度を変更すべきと提言しています。
その他、鉄道・バスの経済的な持続可能性を担保する方法として、鉄道車両部品を共通化することも有用だとしています。コスト削減、サプライチェーンの安定やメンテナンス分野の人材育成の効率化につながるためです。
特に過疎化が進む地方では、公共交通事業が苦境に立っている一方で、住民の移動手段として重要な役割を果たすため、事業の維持・確保が一層重大な課題となっています。航空を含め、公共交通システムの廃止と再編には、広域的かつ公共的な観点での検討が必要であるため、地方自治体が適切性・必要性を判断すべきと提言しています。地域の公共交通事業に国から補助金を拠出する場合には、単純な赤字補填ではなく地域活性化につながるよう、国主導で検討すべきとしています。
その他、無人運転や空飛ぶクルマなど、人手不足を踏まえた新しい交通サービスの推進も示しています。
「環境と経済の好循環の創出に向けた施策」については、政府に対して、サプライチェーンのデータ連携・グリーン化や、GXにつながる新技術への大胆かつ長期的な投資、研究開発支援を求めています。既存の交通システムにおいても、エネルギー効率の向上や燃料転換、電動化に取り組み、グリーン化を目指すことが必要だとしています。