鉄道産業の脱炭素化と発展を目指す「鉄道分野のGXに関する基本的考え方」を公表 国交省
国土交通省はこのほど、2040年を見据えた、鉄道分野のGX(グリーン・トランスフォーメーション)に関する考え方や目標を策定した「鉄道分野のGXに関する基本的考え方」を公表しました。
GXとは、産業革命以降、化石燃料を中心として発展してきた経済や社会、産業構造を、クリーンエネルギー中心の社会システムに移行させ、エネルギーの安定供給と経済成長、CO2排出量削減の同時実現を目指す取り組みです。鉄道分野のGXにおいては、脱炭素化への取り組みを負担ではなく成長の機会として捉え、迅速かつ規模感のある投資で社会実装と海外展開を進め、発展につなげることが重要だと訴えています。
現状、鉄道産業は、日本全体の約2%に相当する電力量を消費する高負荷産業です。今後、DXの進展やGXのために電力化が拡大することによる電力需要の大幅増加が見込まれるため、省エネルギー化が不可欠となっています。また、鉄道ネットワークの非電化区間ではディーゼル車の運行が主流となっているため、化石燃料からの脱却も求められています。
政府は、2050年までにカーボンニュートラルの達成を掲げており、2023年7月に「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(GX推進戦略)を策定しました。さらにGXに向けた投資の予見可能性を高めるため2025年2月にGX推進戦略を改訂、名称も改めた「GX2040ビジョン」を策定しました。GX2040ビジョンでは個別分野の取り組みが示されており、鉄道分野についても方向性が明記されています。これらを踏まえ、2040年を見据えた具体的な目標や戦略を策定すべく、有識者からなる「鉄道分野のGXに関する官民研究会」が設立され、同研究会の4回の議論を経て「鉄道分野のGXに関する基本的考え方」が取りまとめられました。
本文書では、「基本的な考え方」と「鉄道分野のGXを進めるための目標」が提示されました。基本的な考え方については、政府は、脱炭素効果の高い次世代型車両や設備の導入・普及を推進し、開発や生産への投資を促すことで、量産化、標準化によるコスト低減を目指すとしました。また、水素車両開発での共通技術課題の解決に向け、事業者やメーカーの連携・協調を促し、早期実用化を図ることが明記されました。
メーカーにおいては、海外需要を取り込むため、設計・製造能力の確保など生産性向上に取り組むとともに、鉄道車両に関わるカーボンフットプリントの導入を進め、サプライチェーン全体でのCO2排出量削減の取り組みを促します。鉄道事業者については、GX投資を最大限に前倒しで進め、2030年代にCO2排出量を2013年度比で540万トン削減する目標の早期達成を目指すとしています。
鉄道分野のGXを進めるための目標は、「省エネの徹底」「非電化区間のGX」「再エネの最大限導入」「国・関係団体などによる環境整備」の4つに分けられており、それぞれに沿った具体的な目標が掲げられました。主要鉄道事業者(JR、大手民鉄、地下鉄事業者)は、実現に向けた環境整備を含め、官民の関係者が連携して取り組むよう求めています。