環境省は4月21日、「サステナビリティ(気候・自然関連)情報開示を活用した経営戦略立案のススメ~TCFDシナリオ分析と自然関連のリスク・機会を経営に織り込むための分析実践ガイドVer2.0~」を公表しました。
このガイダンスは、企業の気候関連・自然関連情報の分析・開示や、ICP(インターナルカーボンプライシング)について解説したものです。企業におけるサステナビリティ情報開示の重要性が高まっていることをふまえて作成されました。具体的には、TCFD提言やTNFD提言の概要、シナリオ分析や自然関連情報開示に関するポイントなどを取り上げています。別添資料では、国内外の企業における開示事例や、環境省が実施したモデル事業の成果などを掲載しています。
このたび公表された「Ver2.0」では、昨年度の初版から次のような点が改訂されました。
まず、本編の第1章では、企業による気候・自然関連情報開示に関する国際開示基準や各国の政策などが紹介されていますが、これらの動向が最新情報に更新されています。
例えばISSB(国際持続可能性基準委員会)では、TCFD提言に基づいた気候変動情報開示を含む、サステナビリティ開示の最終版を発表しました。CDPは、2018年以降の気候変動の質問書において、TCFD提言に対応した質問に関する回答を企業に求めています。各国の動向として、EUでは、2023年1月以降、ESGリスクの情報開示を段階的に義務付けています。英国・フランス・シンガポール・スイス・ブラジルなどでも、TCFD提言に準拠した気候情報開示の義務化、または義務化の検討を進めています。
第3章では、TNFD開示におけるシナリオ分析・目標設定の方法論が追加されています。ガイダンスによると、シナリオ分析には、不確実な状況(気候変動や自然災害の進行など)に対する企業のレジリエンス力を向上させることができるというメリットがあります。科学的根拠に基づいた目標設定では、不足しているデータが明らかになり、今後のデータ収集方針の検討に役立つなどの利点があります。
2024年6月~2025年1月に環境省が実施した「自然関連財務情報開示支援モデル事業」(日本企業が課題としている自然関連のシナリオ分析・目標設定を伴走支援したもの)は、TNFDが発行したシナリオ分析ガイダンスにおける推奨ステップをベースに行われました。そこで、第3章では、支援先企業において、具体的にどのような手順でシナリオ分析や目標設定が行われたのかを解説しています。別添資料でも、モデル事業で支援したTNFDシナリオ分析と目標設定の分析事例が追加されました。