東京証券取引所(東証)はこのほど、海外機関投資家向けに実施した国内上場企業の英文開示に関するアンケート調査結果を公表しました。この調査は今年4月に施行されたプライム市場における英文開示義務化を踏まえた国内上場企業の対応を、海外機関投資家が評価する目的で実施されました。
東証は今年4月1日、有価証券上場規程を一部改正し、プライム市場における英文開示の義務化を規定しています。調査は同年7月14日~8月15日の間にWebアンケート形式(記名式)で実施され、40件の回答を得ました。回答者のうち、投資チーム内に日本語の開示資料を読むことができるスタッフが「いない」と回答した割合は55%でした。
海外投資家による評価として、日本の上場会社の英文開示について「改善している」もしくは「やや改善している」と回答した割合は全体の88%となりました。決算情報の英文開示についても半数近く(44%)が「満足」もしくは「やや満足」と回答、適時開示情報については40%が「満足」もしくは「やや満足」と回答しました。
一方、その他の開示書類(有価証券報告書や株主総会招集通知など)の英文開示については「満足」もしくは「やや満足」と回答した割合は14%と低くなりました。
また、現状に不満を持つ回答からは、英文開示の情報量が不足していることや、開示の遅さを指摘するものがありました。英文開示の義務化となっていない文書においては英文開示が進んでいないことや、開示されても和文文書の一部や概要のみの英訳となっているケースがあるためです。
英文開示に関する同様の調査は、2021年、2023年公表に続く3回目の実施となります。以前の調査でも、和文との情報量の差や開示の遅さについて不満が示されていました。
アンケート調査では、今後進展を望む事項についても尋ねています(複数回答可)。要望の多かった項目は、多い順に次の3つとなりました。
- 英文開示を行う上場会社数の増加
- 英文開示を行う対象書類の増加
- 決算短信と適時開示資料の英訳範囲を一部や概要のみとせず、全文とする
他方、英文翻訳の「品質向上」を求める回答数は、先の上位3つに比べて約半数にとどまりました。翻訳の質よりも情報の量と開示の公平性を重視する傾向が示唆されました。
例えば、英文開示を行う対象書類の増加を求める回答者では、「IR説明会資料」を挙げる回答が最も多くなりました。次いで「有価証券報告書」、「IR説明会書き起こし」が続きました。IR説明会資料については「フォーマットの関係で機械翻訳が最も難しい場合がある」といった個別の回答も紹介されています。
なお、公表資料には英文開示が優れている会社として投資家が回答した企業46社の社名が理由とともに掲載されています。充実した開示内容や適時性などが評価されました。