ランサムウェアとは?近年の攻撃手法や被害、企業における対策を解説
| 執筆者: | ニュートン・コンサルティング 編集部 |
| 改訂者: | ニュートン・コンサルティング 編集部 |
ランサムウェアによるサイバー攻撃は、多くの企業や組織にとって大きな脅威として認識されています。大企業の被害事例も多々報道されており、IPAのサイバーセキュリティ10大脅威組織編には2026年時点で11年連続選出されました。
本記事では、近年のトレンドを含めてランサムウェアの概要や感染経路、企業の取るべき対策、感染時の対応について解説します。
ランサムウェアとは
ランサムウェア(Ransomware)はマルウェアの一種です。ランサムウェアは感染した端末のデータやソフトウェアなどの電子資産を暗号化して利用できない状態にし、その復号に対価を要求するサイバー攻撃に利用されるマルウェアです。
ランサム(Ransom)とは身代金を意味する言葉です。暗号化したデータを盾にとって脅迫することから、ランサムウェアと名づけられました。
従来のランサムウェア攻撃は感染した端末のデータを暗号化する手法が主でしたが、端末内のデータを暗号化せず、情報を窃取した上で外部への公開を脅迫する「ノーウェアランサム」と呼ばれる手口も登場しています。
主な感染経路
ランサムウェアの感染経路は大きく分類すると2種類に分かれます。
一つは人的要因を起点とした感染です。標的型攻撃など各種のサイバー攻撃と組み合わせた経路が想定されます。
- メールのリンクを経由した感染
- Webサイトのリンクを経由した感染
- Webサイトや広告の閲覧による感染(Drive by Download)
- USBメモリなど外部記憶媒体を経由した感染
もう一つの感染経路は、ソフトウェアやハードウェアの脆弱性を突いた外部からの侵入です。
- VPN機器の脆弱性を狙った侵入・感染
- RDP(リモートデスクトップ)やSMBなどの通信プロトコルの脆弱性を突いた侵入・感染
- 企業の海外拠点などサプライチェーンを経由した侵入・感染
- OSやソフトウェアの脆弱性を突いた侵入・感染
近年のランサムウェア攻撃の特徴
近年のランサムウェア攻撃の特徴を紹介します。
ダブルエクストーション
感染した端末のデータの暗号化とデータの外部公開の二重にわたる脅迫を行います。さらには、顧客・取引先への情報公開を示唆して脅す三重脅迫(多重脅迫)のパターンもあります。
サプライチェーン攻撃との組み合わせ
サプライチェーンを侵入経路として利用してランサムウェアに感染する事例も多くみられます。対策には取引先を含めたサプライチェーン全体でのセキュリティ確保が必要です。
RaaS(Ransomware as a Service)
ランサムウェアの開発者はランサムウェア攻撃をサービスとして提供し、攻撃者は利用する形式です。サイバー攻撃の分業化が進み、攻撃の実行に対するハードルが下がることが懸念されます。
IAB(Initial Access Broker:初期アクセスブローカー)の存在
IABはランサムウェアの標的となる企業等のネットワークに侵入するための認証情報等を売買する者です。VPNの脆弱性などを突いて企業ネットワークへの足がかり(侵入経路)だけを専門に盗み、それをダークウェブでランサムウェア実行犯に売却する組織とされます。これにより、規模によらず全ての企業がターゲットになりうる危険性があります。
ランサムウェアに感染するとどうなる?
企業や組織の基幹的な役割を果たすシステムやデータがランサムウェアに感染すると、情報資産が暗号化されてしまいます。その結果、システムやサービスの停止が発生し、それらを用いた業務の停止に連鎖的につながります。
業務停止した場合、組織には事業収益の減少、情報流出に対する損害賠償、ビジネス機会の損失、信頼の喪失などの直接・間接的な被害につながります。また、その後の対策や外部への情報発信へ多大なリソースが必要です。
例として、2025年9月には、アサヒグループホールディングス株式会社がサイバー攻撃によるシステム障害の発生を公表しました。同社はその後、ランサムウェアによる攻撃を受けたことを確認しています。このサイバー攻撃により、システムを利用した受注や出荷業務が停止しました。また、システムの復旧には2カ月以上の期間を要しました。さらに100万人以上の個人情報流出の可能性があり、10万人以上の取引先のほか、個人情報流出が確認されています。
同グループの2025年10-12月の売上は、このサイバー攻撃を原因とする出荷制限の影響により、前年比でアサヒビール株式会社が前年比15%以上、アサヒ飲料株式会社が30%程度、アサヒグループ食品株式会社が10%程度の減少となりました。また、「Qilin」と名乗る団体がダークウェブ上に犯行声明を公表したことも注目を集めた要因です。
企業が実施すべきランサムウェア対策
ランサムウェア対策は、企業や組織にとって重要な経営課題の一つです。下記に挙げる対策を組み合わせ、包括的に対応する必要があります。
ランサムウェアの侵入を防ぐ技術的な仕組みは重要な対策対象です。ゼロトラストモデルに基づいた防御態勢を築くことが求められます。
また、外部からの侵入経路の一つである人的感染経路も防御を強化する必要があります。具体例として、従業員教育の強化などが挙げられます。
さらには、ランサムウェアに感染した場合にも被害を最小限で抑える備えも大切です。被害発生時のエスカレーションルート確保、被害封じ込めなど対応に向けた体制や手順を確立しておきます。
感染してしまった場合の対応
ランサムウェアへの感染が確認された場合、最初にすべきことは端末をネットワークから隔離することです。感染の拡大を防ぐ上で、ネットワークからの遮断は有効となります。警察庁によると、感染原因の調査などに必要なログが消失する場合もあるため、パソコンやネットワーク機器の電源は落とさないことが推奨されています。
その後、警察またはサイバー犯罪相談窓口など公的機関への通報・相談を行い、対応します。
なお、攻撃者の要求に従って身代金を払ってもデータが復号化される保証はないため、警察などから必要な情報・助言を得た上で対応することが重要です。