南海トラフ巨大地震の被害想定(第二次報告)発表
掲載:2013年04月24日
コラム
2013年3月18日に内閣府より南海トラフ巨大地震※の被害想定(第二次報告)が発表され、地域および都道府県別に水道、電気などのライフラインの被災直後の支障率、復旧予測日数が具体的な数値として明らかになりました。
※南海トラフとは日本の四国、南方海底に、静岡から九州近辺まで伸びている深い溝のことです。これまでにこの南海トラフ沿いを震源に南海地震(四国沖から紀伊半島沖で発生)、東南海地震(紀伊半島以東で発生)、東海地震(駿河トラフ沿いで発生)といったマグニチュード8クラスの地震が約100年から200年ごとに発生しています。この3つの地震の震源域が連動し発生する巨大地震を南海トラフ巨大地震と呼んでいます。
本報告書の位置づけ
その名のとおり、本報告書は2012年8月に発表された第一次報告“南海トラフ巨大地震の被害想定”の続編にあたるものです。第一次報告では、建物被害・人的被害等の推計結果の公表が中心でしたが、今回は交通施設被害や水道・電気被害などライフラインの被害想定が中心になっています。地震の影響で、どんな支障が発生する可能性があるのかをより生活に密着した観点から明らかにしています。
表1:被害想定項目における第一次報告と第二次報告の違い
自社のBCPの前提条件の見直しに有効
企業がBCP・BCM構築や運用を考えるうえで気にしたいデータとしては「4 ライフライン被害」、「5 交通施設被害」、「6 生活への影響」を挙げることができます。特に、今回、第一次報告にはなかった、通信、電気など事業継続に欠かせないライフラインの被害、復旧めどが定量的に公表されていますので、企業のBCP担当者はこれらの被害データを参照し、自社の被害想定や事業継続の対策の妥当性を再検討するのに有用です。
たとえば、今回の想定によれば、(あくまでも最悪のケースを想定した場合の話ですが)東海地方では電力が復旧するまでに1週間かかると示されています。もし、仮にあなたの企業で3日間の停電対策しかない場合、残りの4日間をどうするのか(あるいは、その停止リスクを受入れるのか)、再検討する必要があります。
表2:東海地方が大きく被災する場合のライフラインの復旧予測
上水道 | 下水道 | 電力 | 通信 | ガス(都市ガス) | ||
---|---|---|---|---|---|---|
固定電話 | 携帯電話 | |||||
東海 (静岡、愛知、三重) |
約6週間後 | 約3週間後 | 約1週間後 | 約1週間 | 数日間 | 約4週間後 |
近畿 (和歌山、大阪、兵庫) |
約2週間後 | 数日間後 | 数日間後 | 数日間 | 数日間 | 数日間後 |
山陽 (岡山、広島、山口) |
約1週間後 | 数日間後 | 数日間後 | 数日間 | 数日間 | 数日間後 |
四国 (4県) |
約6週間後 | 約1週間後 | 約1週間後 | 約1週間 | 数日間 | 約3週間後 |
九州 (大分、宮崎) |
約5週間後 | 約5週間後 | 約1週間後 | 約1週間 | 数日間 | 約3週間後 |
※前提となる各地の震度と津波の高さは以下の通り。
本報告に続く第三次(最終)報告では、防災・減災対策がカバーされる予定
今回被害想定を公表した南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループからは今後、最終報告として南海トラフ巨大地震に対応する防災・減災対策が発表される予定です。ただしその骨子については今回の第二次報告の中で既に公表されており、企業には、被害を最小化するために
の3点で対策が求められることになりそうです。最悪の場合、東日本大震災を超える被害の発生が懸念される南海トラフの巨大地震については十分に備えて被害を低減する取り組みが個々の企業に求められていると言えます。
- 事業継続計画の策定・充実
- サプライチェーンの複数化
- 物流拠点の複数化
の3点で対策が求められることになりそうです。最悪の場合、東日本大震災を超える被害の発生が懸念される南海トラフの巨大地震については十分に備えて被害を低減する取り組みが個々の企業に求められていると言えます。