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コラム

不測の事態での臨機応変な意思決定に役立つOODAループとは

2018年09月12日

シニアコンサルタント

英 嘉明

シニアコンサルタント 英 嘉明

OODA(ウーダ)ループは、不測の事態や緊急事態における臨機応変な意思決定方法です。このスキルが身に着いていると、不測の事態や緊急事態に直面した際、頭が真っ白になり立ち尽くすこと、または思い付きの不適切な行動に走ることの防止に役立ちます。本稿では、OODAループの概要や歴史、具体的な活用方法を解説します。

OODAループとは

OODAは、Observe(観察)、Orient(情勢見極め・方向づけ)、Decide(決定)、Act(実行)という4つの活動の頭文字からなり、これらの活動を一連の流れとして回していきます。そして、OODAを一回り実施した後は、その実施結果のObserve(観察)を含め、直ちに次のOODAを実施し、事態が収束するまでOODAを繰り返します。このOODAの繰り返しをOODAループと呼んでいます(図1.参照)。

図1. OODAループ

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OODAループはいつ、どのように生まれたか

OODAループは、元々は戦争をきっかけに誕生した「戦いで勝つための考え方」です。米国空軍のジョン・ボイド大佐が、朝鮮戦争での米軍機の高い撃墜率に注目し、その成功要因を分析し導き出しました。OODAループの考え方は、米国空軍で広く受け入れられ、当初対象とした空中戦対策のみならず、中期的な戦略策定等でも応用されているようです。

ボイド大佐は、空中戦で勝つための成功要因として下記を明らかにしました。

  • 敵機のより早い発見と動きの把握 (Observe)
  • 敵操縦士技量、敵機性能、天候等の情勢の見極めと対処の方向づけ(Orient)
  • 迅速な意思決定(Decide)
  • 的確な実行(Act)
  • OODAループを敵に比べてより速く、より的確に繰り返すこと
  • 以上のために以下が重要なこと
        ― 操縦士の優れた資質・経験・判断力・操縦技術
        ― 優れた戦闘機性能(特に機動性)・レーダー性能
        ― 敵戦闘機情報の事前入手

さらにボイド大佐は、OODAの中では、Orient(情勢見極め・方向づけ)が特に重要と述べています。それは下記理由に基づきます。

  • Orientのやり方は、ObserveとActのやり方に暗黙の指示と統制の影響を及ぼす
  • Orientの能力は、組織に伝わる遺産や文化的伝統を受け継いでいる
  • Orientは、Observeで得た情報を選別し、決定への方向づけをする

ボイド大佐のOODAループ図(参考文献1参照)をもとにOODAループの概要図を描くと、次のようになります(図2.参照)。

 

図2.OODAループの概要図

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ちなみに、図2をご覧いただきますと、意思決定者が1人の場合のケースを記述していますので比較的シンプルなことがわかります。しかしながら、ObserveやOrientを複数の人々、殊に文化的伝統や経験、保持情報等が異なる人々が行う場合は、活動がもっと複雑になり、OrientやDecideが難しくなります。つまり、集団がOODAループを迅速かつ適切に実行するためには、メンバーの価値観や知識、経験、能力が共有されており、お互いのコミュニケーションと合意形成が円滑に行えることが必要と言えます。

OODAループの具体的な活動はどのようなものか

それでは、OODAループを具体的かつ、より身近な事例に当てはめますと、どうなるのでしょうか。ここでは、不測の事態、緊急事態の例として大地震発生を取り上げながら、Observe(観察)、Orient(情勢見極め・方向づけ)、Decide(決定)、Act(実行)の活動を説明します。

Observe(観察)

大地震の発生時は、身の危険を感じ、かつ一体何が起きたのか、と頭が混乱する事態に陥ります。このような不測の事態では、まず自分の身の安全を確保することが最優先です。そのためには何よりも事実又は現状の冷静な認識、つまりObserve(観察)を行うことが必須です。Observe(観察)の具体的な活動としては、自分自身の目や耳等の五感を総動員しての状況確認(例:室内乱雑、建物破損、負傷者発生)とラジオ、TV、スマホ等の情報機器を使用しての情報収集(例:災害、被災、安否等の情報)があります。また、集団で対処する場合は、メンバーが認識し、把握した情報を迅速に集約、整理し、リーダー等に報告することが重要となります。

Orient(情勢見極め・方向づけ)

Observe(観察)の結果が自分にとってどのような意味があるかを考え、自分を取り巻く情勢を見極めます(例:津波の可能性あり)。そして、見極めた情勢に対して、自分がとるべき行動の方向づけをします(例:高所への避難)。これらの見極めと方向づけを迅速かつ適切に行うためには、多様な経験と知識を積み重ね、洞察力や意思決定力を身に着ける必要があります。また、集団で対処する場合は、メンバー間での円滑なコミュニケーションと情勢の迅速な共有が不可欠となります。

Decide(決定)

方向づけした行動(例:高所への避難)についての具体的な活動を、考えられる選択肢の中から決定します(例:隣ビルDecide(決定)屋上への緊急避難)。また、集団で対処する場合は、メンバー全員への決定した活動の周知徹底、および各自の役割(例:避難誘導係、負傷者救助係、避難誘導係に従った行動等)の再確認が必要となります。

Act(実行)

決定した活動を直ちに、的確に実行します。集団で対処する場合は、リーダーやメンバーがそれぞれの役割を確実に遂行し、お互いに連携することが必要となります。

Act(実行)した後は直ちにObserve(観察)に移り、Act(実行)の実施状況の確認(例:避難状況の把握)や、変化している状況の把握(例:近隣の被災状況把握)を行います。そしてOrient(情勢見極め・方向づけ)→Decide(決定)→Act(実行)と続け、不測事態への対処目的(例:緊急避難の完了)を達成するまでOODAループを続けます。
 

OODAループを定義する意義は何か

OODAという言葉は知らなくても、OODAループの活動は、実は我々が危険な状況に面した時に無意識に行っていることです。例えば、自動車の運転中に混雑している交差点を渡る時は、歩行者や車の位置と動きを観察し、次の動きを予測し、事故を起こさないためには何をすべきかを瞬時に考え、具体的な活動を決定、実行し、直ちに次の観察につなげています。つまり、OODAループを無意識に回し続けていると言えます。

それではOODAループを定義する意義は何でしょうか? OODAループを定義することには2つの意義があります。

1つは、無意識ではなく意識した活動にすることで、不測の事態に遭遇しても冷静な対応を促せることです。不測の事態や緊急事態が発生した時にやるべき事として、シンプルなOODA(観察→情勢見極め・方向づけ→決定→実行)を意識することにより、冷静で臨機応変な対処を可能にします。

もう1つの意義としては、臨機応変な対処を適切に行うための能力の平時における育成、強化の重要性を明確化することが挙げられます。なお、ここで言う能力とは、不測の事態の発生時において冷静に客観的に状況を観察すること(Observe)、観察で得た諸々の情報を総合し、一体何が起きたのかを見極め、どうすべきかの方向性を定めること(Orient)、具体的にやるべき活動を意思決定し(Decide)実行すること(Act)等の能力を言います。
 

OODAループとPDCAサイクルはどのように違うか

マネジメントシステムや業務改善等において、目的や目標を達成するための基本的な考え方としてPDCA(Plan – Do – Check –Act)サイクルが広く活用されていますが、筆者はPDCAサイクルもOODAループも広く捉えると問題解決方法の一種と考えます。ここでは、PDCAサイクルとOODAループについて、筆者が考える適用の目的と状況、重要事項に関する相違点を表1に示します。

表1.PDCAサイクルとOODAループの比較表

比較項目 PDCAサイクル OODAループ
適用の目的 目標の達成 不測の事態への適切な対処
適用 環境変化の予測 ある程度予測可能 予測が難しい
状況 達成目標の設定 何らかの目標を設定 目標の設定が難しい
実行計画の作成 実行計画の作成が可能 実行計画の作成が難しい
活動の期間 比較的長い(月、年) 短い(秒、分、時)
重要 重視する視点 目標達成への計画性 臨機応変な対処
事項 重大な能力 目標設定・計画策定能力 情勢見極め・方向づけ能力
集団での必要条件 目標・計画の共有 知識・判断基準の共有

 

PDCAサイクルは、ある程度先行きの見通しが立つ状況において、何らかの目標の達成を目指して適用されます。例えば、業務改善や各種プロジェクトにおいて、Planの段階で課題の明確化や達成目標および活動計画の策定をしっかり行い、かつ活動後に結果をCheckし改善することにより、総合的な労力や時間の効率向上および効果的な目標達成を目指します。

逆に、大地震発生時のように状況が不確実で環境変化の予測が困難な場合は、事前の目標設定や活動計画作成が困難でPDCAサイクルの適用が難しいと言えます。このような場合は、発生した事態に即して臨機応変な対処を行うOODAループの適用が向いているでしょう。また、例えば業務改善においても、環境が激変した場合や、全く新しいトラブルが発生した場合は、過去の経験や従来型の改善活動が有効とは限らず、現場・現物・現実の観察をもとに改善策を策定し、実行するというOODAループの考え方が向いている場合があると言えます。

OODAループには、PDCAサイクルにある計画の策定作業がないので、一見すると実行の負荷が小さいように見えます。しかしながらObserve(観察)とOrient(情勢の見極め・方向づけ)を不確実な状況で適切に行うためには、あらかじめ多様な経験を積み、深い知識と優れた分析・統合能力を備えていることが重要と言えます。さらに、集団でOODAループを実行する場合には、メンバー間で知識や判断基準が共有されており、お互いのコミュニケーションと合意形成が円滑に行えることが求められます。つまり、OODAループの適切な実行のためには、事前の体制の確立や適切な人材の配置、必要な教育・訓練の実施が不可欠で、これらの事前準備を効果的、効率的に行うためにはPDCAサイクルの適用が役立つと言えます。

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