金融庁はこのほど、「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正案を公表し、パブリックコメントの募集を開始しました(締め切りは2025年4月27日17時必着)。
「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正案では、法令順守の特に重要な事項として、「貸金庫に関するコンプライアンス」の意義や着眼点に関する項目が新設されています。
銀行は、銀行法に基づく付随業務の一形態として貸金庫サービスを提供していますが、貸金庫では行員による不正(貸金庫内の顧客資産の窃盗など)が生じる恐れがあります。また、マネー・ローンダリングやテロ資金供与などの不正な目的で利用されるリスクもあります。特に貸金庫は、その秘匿性を利用して、悪意ある者が不正・不適切な目的で使う可能性があります。
こうした前提をふまえて改正案では、銀行が貸金庫を提供するにあたり、次の3点を求めています。
1つ目は、行員による不正などを防止するための管理態勢です。具体的には、貸金庫の入退室や開閉に関する手続き・規定を整備することや、予備鍵を含む重要物の保管方法に関する規定を作成すること、入退室・開閉に関する管理(例:貸金庫前に防犯カメラを設置する)を実施することなどが挙げられています。
2つ目は、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与等のリスクへの対応です。内部管理体制を構築しているか、貸金庫の約款などにおいてリスクが高いと考えられる物品が適切に格納可能な物品から除外されているか、貸金庫の約款などの定期的な見直しを行っているか、といったことが観点として記載されています。
3つ目は事案の公表です。貸金庫からの顧客資産の窃取・横領事案は、原則公表することと記載されています。また、事案が発生した原因を分析して再発防止対策を講じることや、他社の事案をふまえて類似事例の再発防止措置を検討することも指針として示されています。
改定箇所の詳細は、金融庁ホームページに掲載されています。また、改定案に対する意見は郵送またはインターネットから提出できます。パブリックコメント終了後、所要の手続きを経て適用される予定です。