平成21年4月に中小企業庁は、中小企業が新型インフルエンザ対策を想定した事業継続計画を策定する際のガイドライン「中小企業BCP策定運用指針を用いた新型インフルエンザ対策のための中小企業BCP(事業継続計画)策定指針」(以後「当ガイドライン」と呼ぶ)を公表しました。
対象組織と利用方法
当ガイドラインは、中小企業向けのBCP策定・運用のためのガイドラインを示した「中小企業BCP策定運用指針」(2006年2月公開)を、“新型インフルエンザ対策”という観点から補完するために作成されたものです。対象組織は、BCPを策定していない企業、BCP策定済の企業ともに含まれます。BCPをまだ策定していない企業の場合は、「中小企業BCP策定運用指針」と当ガイドラインを併せて利用することで、自然災害・大火災・テロ攻撃などに加え、新型インフルエンザにも対応したBCPを策定することができます。BCP策定済の企業の場合は、既に策定したBCPに、新型インフルエンザ対策という観点から“抜け・漏れ”がないかどうかを確認する上での参考書として利用するとよいでしょう。ガイドラインの内容
当ガイドラインでは、 “新型インフルエンザ対策”という観点に立ってBCPを策定・運用する場合に、特に必要となる以下のようなポイントが、BCP策定・運用のステップに沿って詳細解説されています。- 業種・業態によっては、事業の継続ではなく、逆に自粛を要請される可能性がある
- 事業継続レベルは、新型インフルエンザの発生段階(※)ごとに設定する必要がある
- 新型インフルエンザの被害想定および必要な対策は、地震などの自然災害の場合と大きく異なる など
他のガイドラインとの比較
当ガイドライン〔①〕と、企業における新型インフルエンザ対策を示した他のガイドラインの比較を簡単に解説します。(中小企業庁)
②「中小企業のための新型インフルエンザ対策ガイドライン ~命を守り、倒産をまぬがれるために~ 」
(東京商工会議所 )
③「新型インフルエンザ対策ガイドライン」
(新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議 )
中小企業向けの新型インフルエンザ対策についてのガイドラインとしては、2008年10月に東京商工会議所から発行された「中小企業のための新型インフルエンザ対策ガイドライン ~命を守り、倒産をまぬがれるために~」〔②〕があります。②と比較して、①は圧倒的に情報量が多く、またイラスト等を多用した分かりやすさが特徴です。
2009年2月に発行された「新型インフルエンザ対策ガイドライン」(新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議)にも、中小企業に限定しない形ではありますが、企業向けの対策ガイドラインが記載されています(「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」)〔③〕。両者とも、全体の情報量は大差ありません。あえて相違点を挙げるならば、③の方が、海外勤務する従業員等への対応について、若干詳細な解説が記載されていること、また、発生段階ごとに必要な対策についての情報量が多いこと、です。
いずれのガイドラインにも、「何を」すべきかについては指針が示されているものの、「どうやって」に関する解説はありません。「どうやって」という部分をしっかりと考えた上で事業継続計画を作成していくことが”自社に最適な”事業継続計画を作る際の成功のポイントになります。