AI活用のアンケート調査結果も掲載、AIディスカッションペーパー(第1.0版)を公表 金融庁
金融庁は3月4日、金融分野における生成AIなどの活用について論点をまとめた「AIディスカッションペーパー(第1.0版)」を公表しました。金融分野における健全なAI利活用を後押しする方針のもと、ディスカッションペーパーへの意見を募集するとともに、整理した論点について検討を深める目的で「官民ステークホルダー勉強会」を本事務年度(2025年6月30日まで)内に立ち上げると発表しました。
公表された文書はAIディスカッションペーパー(第1.0版)「金融機関等におけるAIの活用実態と健全な利活用の促進に向けた初期的な論点整理」です。本文(55ページ)とともに概要資料(41ページ)も作成されました。
同文書を策定するにあたって金融庁は事前に金融機関向けにAIの利活用についてアンケートを実施しました(アンケート実施期間は2024年10月3日~11月15日)。預金取扱等金融機関や金融商品取引業者、保険会社など計130社から回答を得られ、AI活用の実態についてまとめられています。
それによると、回答事業者の93.1%が従来型AIもしくは生成AIを業務に活用していました。従来型AIは、チャットボットなどの顧客対応業務やマーケティング、与信審査・信用リスク管理・引受審査といったリスク管理の高度化、市場分析・市場予測などに導入されていました。生成AIについては業務効率化を目的とした社内利用(文書要約や翻訳、社内FAQなどの情報検索)が最も多く、これから対顧客サービス(コールセンター業務支援やドラフト作成など)への活用に向けた検討を行っていくと回答した事業者は半数以上を占めました。また、日本銀行が預金取扱金融機関向けに実施したアンケートを取り上げ、回答者の約3割が生成AIを利用していることが分かったと記しています(アンケートの対象先は155の金融機関)。
一方、AI利用における課題は①従来型AIと生成AI共通のもの②生成AIにより難化したもの③生成AIがもたらしたもの――の3つに整理されています。例えば情報セキュリティやサイバーセキュリティは生成AIによって特に難化した課題の一つとして項目に挙がっています。ハルシネーション(幻覚)や金融犯罪への悪用(フィッシング詐欺などの巧妙化、ディープフェイク技術を使った特定人物なりすましによる詐欺行為など)などは新たな課題として挙げられています。
金融機関はこうした課題に対処するため、AIガバナンスの構築に取り組んでいます。例えば、AIに関する規程を策定しています。多くの金融機関が「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」を参考にしたと紹介されています。
金融庁に対する主な要望などを踏まえ、今後の対応についても記されています。例えば、AI活用に係る規制要件は十分明確であるか、既存の規制・監督上の枠組みでリスクに十分対応できているかといった観点で検証するほか、セーフハーバーを提供していくとしました。またAIディスカッションペーパーで言及した論点を中心に検討を深めるため、官民ステークホルダー勉強会を近々立ち上げ、6~12月頃まで開催するとしています。また、2024年度内に金融情報システムセンター(FISC)がAIを対象とする基準項目を「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書」に追加する改訂を行うと紹介しています。