総務省はこのほど「デジタル総合戦略2030」を策定し公表しました。2030年頃を見据え、デジタル分野における日本の国際競争力強化および経済安全保障の確保に向けた各種政策を進めるにあたっての基本的な考えと、今後具体的に取り組む事項を整理したものです。
まず、取り組みを進めるうえで重視する横断的な考え方として(1)グローバルファースト、(2)マーケットイン、(3)同志国との連携強化、という3つを挙げました。(1)については、国際競争を生き残るためには一定のグローバルシェア獲得が前提になるとし、研究開発・産業育成の初期段階からグローバルエコシステムの形成を意識することが必要だと述べており、(2)では、研究開発・事業創出にあたって、市場のニーズや利用者の視点を起点とする「マーケットイン」の発想に基づいた戦略的取り組みが重要だと述べています。(3)では、デジタルインフラに関する技術やシステムが複雑化・大規模化する中で、国際的な共同研究・インフラ整備などを行うには同志国との協力関係が不可欠であり、こうした連携を通じて日本の技術を国際的に浸透させ、グローバル市場での優位性確立を目指すことが重要だと記されました。
重点分野に関しては、これまでの取り組みや新たに考慮すべきグローバルな環境変化を踏まえ、▽海底ケーブル▽モバイルネットワーク▽非地上系ネットワーク(NTN)▽サイバーセキュリティ▽大規模言語モデル(LLM)▽オール光ネットワーク(APN)▽データセンター▽光電融合、量子暗号通信等の先端技術の8分野が位置付けられました。
例えば「海底ケーブル」については、日本の国際通信の99%が海底ケーブルを経由している一方、近年世界的に切断事案が頻発しているといった現状も明らかになっています。そのうえで、開発・生産・敷設・保守能力の強化を通じた、ハイパースケーラー等安定的な需要の確保や、2026~2030年に敷設される海底ケーブルについて、日本企業による総延長シェア35%以上獲得といった目標が設定されました。具体的な取り組みとしては、市場ニーズに合わせたケーブル大容量化の研究開発支援や深海用ケーブルなど新技術の大規模デモンストレーション支援などを挙げています。