DX推進を担うデジタル人材の不足と育成環境に課題、ディスカッション・ペーパー「AI時代のデジタル人材育成」を公開 IPA
情報処理推進機構(IPA)はこのほど、IPA調査分析ディスカッション・ペーパー「AI時代のデジタル人材育成」を公開しました。
ディスカッション・ペーパーでは、少子高齢化による労働力減少に直面している日本が、産業競争力の向上と社会課題の解決を実現するためには、AIなどのデジタル技術を活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)が必須であるとしています。このDX推進を担うデジタル人材の充足度や育成環境と、急速に進歩するAIによる影響を踏まえ、日本の現状と課題を整理し、育成環境の目指す方向性について論考を示しています。
IPAが2024年度の日本・米国・ドイツ企業のDXの取り組みを調査した「DX動向2025」によると、DXを推進する人材(デジタル人材)について、日本企業は「大幅に不足している」および「やや不足している」と回答した割合が85.1%となり、米国(23.8%)やドイツ(44.6%)に比べ非常に高い数値でした。加えて、日本企業の状況が、2022年度調査(83.5%)、2023年度調査(85.7%)と比べても大きな改善が見られないと指摘しています。
また、OJTの取り組みについては、リクルートワークス研究所が各国の大卒以上の雇用者(30代・40代)を対象に実施した「Global Career Survey 2024」の調査結果を取り上げました。フルタイムの無期雇用者において1年間にOJTを受けた割合(※)は、日本が40.3%(回答数2,976人)となり、中国(74.1%:回答数524人)や米国(73.8%:回答数500人)、ドイツ(68.2%:回答数488人)などの調査対象国の中で最も低いとしました。
AIの普及によるデジタル人材の需要やスキルの変化を踏まえた見解では、世界経済フォーラム(WEF)発表の「仕事の未来レポート2025」のデータを基に、今後、大規模な雇用構造の変化が予測されているとしています。
具体的には、2025年から2030年の間に、総雇用の14%に相当する新規雇用が創出される一方で、8%に相当する雇用が失われることにより、22%に相当する雇用の変化がもたらされる可能性が予測されています。このうち、新規雇用を牽引するのが、ビッグデータスペシャリストやフィンテックエンジニア、AI・機械学習のスペシャリストなど、テクノロジー関連の職種が予測されているというWEFの見解を紹介しました。
これら調査結果を踏まえ、今後、日本のデジタル人材の育成環境が目指す方向性としては、従来の資格や研修の拡充などの育成の取り組みに加え、スキルをベースに評価や役割を決定するといった人材マネジメントの変革と、実践型学習の拡充によりAI時代に必要なスキルを習得する人材が継続的に育成される環境を整備することが重要であると訴えました。
なお、公表されたディスカッション・ペーパーは、執筆者の見解に基づく内容であり、IPAとしての公式見解を示すものではありません。
※「一定の教育プログラムをもとに、上司や先輩などから指導を受けた」および「一定の教育プログラムにはなっていなかったが、必要に応じて上司や先輩などから指導を受けた」と回答した割合