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首都圏における大規模水害対策に関する最終報告書の公表

掲載:2010年05月17日

執筆者:取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介

コラム

2010年4月、「首都圏における大規模水害対策」に関しての3年に及ぶ調査結果をまとめた最終報告書(A4版131ページ)が、大規模水害対策に関する専門調査会から発表されました。本報告書は概要と詳細の両方が公表されており、内閣府ホームページからダウンロードすることができます。

なお「大規模水害対策に関する専門調査会」とは、近年の国内外の水害の増加、また、各研究機関からの温暖化に伴う洪水リスク上昇の警告を受けて、2007年に中央防災会議が「首都圏水没被害軽減のための対策方針」を決めることを目的として組織したグループです。

         

報告書で示された水害に関する「被害想定」と「対策方針」

本報告書では、大きく「浸水範囲ならびに被害の想定」と「大規模水害に対する対策」について触れています。

-被害想定について

被害想定としては「利根川首都圏広域氾濫」「荒川右岸低地氾濫」そして「東京湾高潮氾濫」の3つにわけた想定が行われています。いずれもライフラインのみならず、人命に多大な影響を及ぼすことが予測されています。なお、ライフラインの復旧に要する期間については、電力が数週間、ガスが1週間、上下水道ともに数ヶ月、通信が1日から数週間との数値を示しています。

-対策方針について

対策については、「適時・的確な避難の実現による被害軽減」「公的機関等による応急対応力の強化と重要機能の確保」「住民、企業などにおける大規模水害対応力の強化」「氾濫の抑制対策と土地利用誘導による被害軽減」「その他の大規模水害特有の被害事象への対応」の5つに分けた対応方針を示しています。中でも公的機関や企業に対しては、BCP策定の必要性を強くうたっています。

企業のBCP策定の際の有益な情報源として使いたい

水害は、ある意味、地震よりタチの悪いものです。なぜなら、ひとたび水没してしまうと電子機器のほぼ全てが、完全に壊れてしまう危険性をはらんでいるためです。企業において「このような水害BCPを、そもそも策定すべきかどうか」、また「策定する場合の復旧目標をどこにおけばいいか」、などといった事柄を決定するための情報源になり得るものだと考えます。中でも先述した「ライフラインの復旧にかかる期間想定」は、特に有益な情報です。

この資料のほか、各地方自治体で公表されているハザードマップ(国土交通省のハザードマップポータルサイト)がありますので、それら情報とうまく組み合わせながら、本資料を活用すると効果的です。ところで残念ながら首都圏以外の地域については、インフラ系の復旧推定値を示した資料は発表されていません。しばらくの間は、他地域のことではありますが本報告書の被害想定などを参考にするのもそれなりに意味のあることでしょう。

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