今後、被災時のコミュニケーションツールとしてソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)やツイッターなどのソーシャルメディアを利用する動きが活発化することが予想されます。
被災時の安否確認には、電話回線を利用することが想定されますが、阪神・淡路大震災の際もそうであったように被災直後は回線が混雑して利用できない場合が多く、信頼できる手段とは言えません。その対応として伝言ダイヤルサービスなどの利用をIMP文書に盛り込んでいる企業もありますが、伝言ダイヤルは通常時に利用しないサービスであるため、緊急時に利用するためには事前の演習が必要になります。
そのような背景もあり、今、SNSやツイッターが注目されています。その利点を簡単にまとめると、
・電話の音声ネットワークに比べメールやSNS、ツイッターが利用するデータネットワークのほうが遥かに回線の混雑具合が少ない
・普段から利用しているテクノロジーであり、緊急時にも戸惑わず利用が可能
・なによりも情報交換するコミュニケーションプラットフォームとして最適
といったところでしょう。
今後は事業継続計画(BCM)のインシデント対応計画へソーシャルメディアの活用を盛り込むことが望まれるようになるかもしれません。
海外では既にツイッター活用事例が多数
得に海外ではインフラへの信頼度が低かったり、伝言ダイヤルなどのサービスが利用できないケースの方が多く、日本国内よりも比較的こうしたテクノロジーの活用に積極的です。
最近では台風16号「ケッツァーナ」による大きな被害を受けたフィリピンで、ツイッターや世界最大のSNS「フェースブック」などが命綱となったケースがあります。ユーザーから被害状況がツイッターやフェースブックに逐次投稿されることで、近づかない方が良い場所など分かるなど、オンラインに迅速に情報が集まりました。政府当局もオンラインの情報は政府の発信する情報よりも速くて信頼できる、と評価したほどの活躍だったようです。
また、地元の民放テレビ局ABS-CBNは衛星画像サービス「グーグル・アース(Google Earth)」を用いて、同局のウェブサイト上で救援が必要な場所を示すなど、様々なテクノロジーを有効活用しながら情報共有を図ったことがうかがえます。
テクノロジー会社から新たに被災情報提供サービスも
そんな中で面白い試みをしているのがGoogle社の慈善事業団体Google.orgが展開するInSTEDD (Innovatative Support To Emergencies Diseases and Disasters)です。彼らは自分たちのミッションを「最新技術とグローバルな人道支援の融合」としており、被災時のコミュニケーションを円滑にするツールと仕組みの開発を進めています。
彼らの提供するツールの中に、被災者との情報交換を円滑にするツールがあります。被災した人がその状況をツイッターでつぶやくと、その「つぶやき」がInSTEDDが提供するアプリケーションと連動し、すぐにツイートした人の位置がGoogle Earth上に表示されます。
その情報を確認した人は、すぐにその被災者に返信することができます。例えば3キロ先で食料支援をしているとか、医師の資格がある自分はどこどこの場所で応急手当を行っている、等のメッセージをすぐに送ることにより、救援活動をスムースに進めることができます。さらに、その情報もすぐにGoolge Earthに反映され、支援の輪が広がる仕組みです。
また当該サービスはFacebookとも連動可能で、被災時に支援ワーカーが付近のすべての連絡相手の場所を確認できるほか、人道支援コミュニティのメンバーに連絡を取ることなどもできるため、迅速に救助を依頼したり、直接救助支援に赴くこともできます。
当該サービスはまだ発展途上ですが、すでにカンボジアにおいて対インフルエンザを想定したテスト運用を行っており、今後こういったソーシャルメディアにおける個人の力を有効に集約する形が、被災時の対応の主役となっていく可能性は極めて高いと思われます。