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業務レベルの目標復旧時間の決定方法

掲載:2010年12月13日

コラム

業務レベルの目標復旧時間(中断した重要業務を復旧させる際の目標数値)は、一般的に、業務中断が時間経過とともに事業に与える影響の変化を見てゆくことで、特定していきます。なお、ここで「事業」とは、顧客に製品やサービスを提供するための一連の活動であり、その結果としての売り上げや収益の単位になる活動のことを指します。また「業務」とは、取引先への支払や製品の納品などその事業を構成する各々の活動を意味します。

当社を例にとって考えた場合、事業はコンサルティング(法人のお客様に対し、効果的・効率的なリスク管理の仕組み作りの支援を行うビジネス)であり、その事業を支える業務としては、営業業務にはじまってマーケティング業務やお客様先へのコ-チング業務、成果物の作成業務など様々な活動が挙げられます。仮に「成果物の作成業務のRTO」を決めるのに、先述した“RTOを特定するための一般的なアプローチ”をあてはめると、「成果物の作成業務が1時間停止したら、ビジネス自体にどのような影響がでるのか」「いや1日間停止したらどうなるのか」といったことを考えて、最終的にどこに復旧目標をおくことが妥当であるかを決定することになるわけです。

(厳密には、ここで業務の最大許容停止時間(MTPD)を特定する作業が必要になりますが、今回のテーマを説明する上で特に重要ではないため、あえて割愛しています。

         

意外に難しい業務レベルのRTOの特定

業務レベルのRTOを決定する際には、仕事の内容を一番良く理解している業務担当の現場部門に依頼して特定してもらうというボトムアップアプローチをとる組織が多いように思われます。このアプローチは、上手く機能すれば、大きな効果を発揮しますが、反面やり方を誤ると、かえって繁雑な作業を生むリスクを持っています。なぜなら、事業を支える(何十、場合によっては何百もの)数多くの業務がある中で、自身が担当する業務が中断した場合にビジネスへ与える影響を想像するのは、そう容易いことではないからです。事実、各部門で特定されたRTOを事務局で、いざ集計してみると、担当者間での認識にばらつきがあり、ビジネス上、どちらも同じくらい重要な業務であるにも関わらず、片方はRTOが数時間、片方は1週間といった結果になってしまい、調整に膨大な時間がかかってしまう、と嘆いていらっしゃる会社様の声を聞くことが良くあります。

事業レベルからのアプローチ

この問題は、業務レベルのRTOを特定する担当現場部門が、各事業間の復旧優先順位に関する統一的な見解を持っていなことに起因すると考えられます。では、どうしたらいいのでしょうか?このような問題を抱える可能性の高い組織においては事業レベルからのアプローチ、すなわち、トップダウンアプローチを上手に活用することが有効です。

この方法では、まず経営層を含んだ上級責任者レベルで、事業レベルの最大許容停止時間(MTPD)を特定します。なお、ここで「事業レベルのMTPD」とは、「組織の存続を決定的に危うくする事業中断の時間の長さ」を指します。MTPDは、あくまでも客観的な数値(経営者の意向を反映していない事実に基づく限界中断時間)に過ぎず、ここに経営者の意向を反映させる必要があるため、特定したMTPDを参考数値として見据えながら(ただし、MTPDを超えないように注意しながら)、事業レベルのRTOを決定していきます。こうして決定した各事業のRTOを会社の意志として、その事業を構成している各業務担当の現場部門に提示し、この事業のRTOを達成することができるような業務のRTOの特定を依頼します。

このようにすることで、各々の業務活動の分析の前提がバラバラになってしまうことを回避することができるので、結果として経営的な観点から見た各事業間の復旧優先順位との整合性がとりやすくなるわけです。

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